主催者のご好意により、定着化しつつある「春塾・秋塾」。
武道は、究極のコンタクト技術と、身体操作性を要求されている日本独自の文化です。相手と対峙する。複数の相手と対峙する。これは、武道だけのものではありません。舞台でも日常でも同じです。ただ、そこに生死がかかっているか、いないかの違いしかありません。武道は生死がかかっているから、きちんと相手と対峙しなければならなかったのです。その「きちんと相手と対峙する」ということが、例えば、舞台表現における相手役、あるいは観客ということであり、日常では人間関係の基本になるものです。また、同じように武道での生死がかかるからこそ発展した身体操作は、どんなジャンルの身体操作よりも、繊細な操作を要求しています。その、繊細な身体操作は、表現は元より、日常での動作を合理的に、あるいは美しく見せるものとなります。

そういった日本の武道の特殊性をいち早く見抜いたのはフォーサイスカンパニーのウイリアム・フォーサイスです。
彼の招聘を受け、過去3年間指導にドイツへ行っています。今年は、年に2回は来て欲しいと頼まれています。夏にはイタリアで行われる、ワールドダンスミーティング、フランスでのワークショップ、先日には、スエーデンのカンパニーからオファアがあり、今や武道は世界のダンス界の注目の的になっています。

そのエッセンスを、3回目となる「春塾」で、より多くの人に知ってもらいたい、そして、表現者たちには、より質の高い表現を出来る身体になってもらいたいと思っています。
今回のショーケースは、舞台を使ってのもので、「観せられる舞台」を作ります。より多くの人たちに、舞台の素晴らしさを感じてもらえる舞台、それが3回目となる春塾の目標です。
フォーサイスカンパニーを指導している経験から、必ず日本発、いや大阪発のコンテンポラリーダンスが世界を席巻させられことが出来る、と確信しました。(日野晃)

日野晃 プロフィール
1948年大阪に生まれる。中学時代は器械体操でオリンピック強化選手に選ばれる。
1970〜80年代にかけては、フリージャズ・ドラマーして活躍。その後独力で武道に取り組み「日野理論」を確立、日野武道研究所を主宰。2005年3月より、ウィリアム・フォーサイスの招きで、フォーサイス・カンパニー（フランクフルト）を指導している。著書に『ウィリアム・フォーサイス、武道家・日野晃に出会う』（押切伸一と共著）、『武術革命』『武学入門』等。
http://www.hino-budo.com/