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RRAレポート 山口なぎさ

Photo by Yu Suzuki

劇場〈ArtTheater dB KOBE〉を拠点に、自身の表現探求や身体の鍛錬のためのリサーチやダンストレーニングなどを行う『dBリサーチ・レジデンス・アーティスト』。2025年度は4月〜6月の約3か月間に16組のアーティストが滞在します。

今回は、4月21日〜4月26日にかけて滞在した山口なぎささんの滞在記録を公開します。

山口なぎさ
【滞在期間:4月21日(月) – 4月26日(土)】

4月21日(月)

・DANCE BOX(dB)に到着。
・多世代型介護付きシェアハウス「はっぴーの家ろっけん」を訪問。スタッフの秋田乃梨子さんに案内してもらう。
・Studio PLOWにて身体慣らし。
・宿に戻り作品の仕掛け作り。

 

4月22日(火)

・「喫茶パープレイ」にてモーニング。
・「はっぴーの家ろっけん」を訪問。dBスタッフ鈴木さんによる写真撮影。
・湊川神社を参拝。
Studio PLOWにてリサーチ。天井にモノを吊しながら、モノと言葉と身体を合わせて動作をつくる。

 

4月23日(火)

リサーチ協力者の前川友萌香さんと合流。「洋食 ジャンボ」でランチ。
・劇場にモノを吊り、吊らされている身体と落ちることについてのワークを繰り返す。
・「はっぴーの家ろっけん」訪問。お葬式へ参加。棺に入る。
・銭湯へ行く。

 

4月24日(火)

・新長田の街を散歩。
・劇場にてクリエーション。記録した言葉を頼りに振りをつくる。
・劇場でクリエーション↔︎散歩を繰り返す。

 

4月25日(火)

・真陽デイサービスでのエクササイズの講師を務める。
・リサーチ協力者の岸本茉夕さんと合流。
・「ミャンマーカレーTeTe」でランチ。
・劇場にてクリエーション。
・RRAのNishi Junnosukeさんのリサーチに参加。
・焼肉を食べる。
・銭湯へ行く。

 

4月26日(火)

・「喫茶パープレイ」でモーニング。
・「はっぴーの家ろっけん」訪問。
・試演会『垂 垂 -chui chui-』の実施。
・dBスタッフとフィードバック

 

山口なぎささんのnoteで今回のレジデンスの様子が綴られています。合わせてご覧ください。
https://note.com/brisk_sheep4223

 

 


 

 

Q1 レジデンスの目的を教えてください。

今後時間をかけて育てていきたい作品をつくるためのリサーチを行うためです。
自身が生きていくなかで気にかかっていた漠然とした大きなテーマ(時間、重力、人間の老い)と向き合っていくために、知らない環境に身を置いて日常とは違うところで新たな情報や環境に触れたいと思い、このレジデンスに応募しました。

 

Q2 どのようなリサーチや実験を行いましたか?

時間/ 重力/人間の老い の3つをそれぞれの観点からリサーチを行いました。

『時間について』
ここ2、3年で拠点としている関東首都圏以外の場所に踊りに行ったり、旅をすることが増え、土地によって時の流れが異なるという感覚について疑問を抱いていました。
自身の体調や思い込みによってそう感じさせているとも考えました。ですが、さまざまな地を訪れる度に時間の流れについて解釈をしたいと思うようになり、作品の構成としてその疑問を利用しようと考えました。
新長田での生活の記憶を記録し、構成に充てるため、消えてしまいそうな繊細な記憶を度々書き留め、稽古場に持ち込み、クリエーションに繋げました。

『重力について』
踊ることにおいて、バランスをとる時や回転をする時、止まるなどといった動作は重力との相性もあるのではないかと思っています。
1年前にとあるワークショップで『体が何かに吊らされていると考えて歩いてみる、回転してみる』というワークを行いました。その際に私の身体はいつもよりも重力との距離感が絶妙で回転がしやすく快適でした。しかし“吊らされてる”ということも重力には変わりないので、重力には抗えないのかもしれない…とも思います。地に足をついて踊っているということを可視化して作品に組み込みたいと思い、劇場にモノを吊るし、身体と物理の合わさる動きをリサーチしました。

『人間の老いについて』
自分自身が1人の人間として今日まで過ごし、今という時間から思い出せる限りの記憶を遡ることはできます。ですが、今より先にある時間は想像にすぎません。作品のストーリーを立ち上げるためのタネを増やし、今よりも先にある時間の想像を繊細に立ち上げたいと考え“人間の老い”についてリサーチをしようと思いました。
「はっぴーの家ろっけん」を度々訪れ、利用者の皆さんと会話をする事で自身から想像できなかった思考や今に至るまでの時間の経過を感じさせられました。
また、生前に会ったこともない方の葬儀に参加させていただいたり初めて棺の中に入るなど、時間の流れの“終わり”を体感しました。
「はっぴーの家ろっけん」での様々な衝撃はクリエーションに大いに刺激をもたらしました。
また、真陽地域福祉センターのデイサービスにて講師もさせていただき自身が普段行う簡単なエクササイズを共有し、身体の可動域の差異性を知りました。


真陽地域福祉センターでのレクリエーションの様子

 

 

Q3 印象的な瞬間(エピソード)があれば教えてください。

同時期に滞在中のRRAの皆さん(福永将也さんとリサーチ協力者の皆さん、小野彩加 中澤陽 スペースノットブランク、Nishi Junnosukeさん)とお話をしたり、試演会に来ていただいたり、リサーチに協力してくださったことです。
そしてリサーチ協力者、dBの皆様の手厚いサポート。
6日間の滞在で何度も“感謝”の瞬間がありました。

 

 

Q4 今回のリサーチで収穫はありましたか?

時間/ 重力/人間の老い の3点を別のものとして違う方向性から考えていたものの、ここへきて“同じようなもの”と感じるようになりました。
時間は平等なものではないと思っていて、東京で作品をクリエーションした際は作品の時間流れもチグハグでした。
新長田で過ごし、クリエーションを行う事で、時間は均等に流れてゆくものだと実感し、作品にも響いていったように思います。まだ作品として産まれたばかりですがこのレジデンスで作品の方向性を理解できたことは大きな収穫です。


試演会

 

Q5 dBスタッフ鈴木と撮影した写真について / 撮影場所を決めた理由は?

「はっぴーの家ろっけん」

新長田に到着し、1番最初に訪れた場所です。
ここに住んでいる方、働いてる方、環境、空気、暖かさ、活気。全てが刺激的な場所です。初日は2時間の訪問でしたが一つ屋根の下での情報量が多すぎてお腹いっぱいになりました。滞在中何度も通っては暖かく迎えてくださり、好きな場所になりました。
写真を撮る際にスタッフの皆さんが駆け寄ってくださいました!


初日。はっぴーの家ろっけんにて

 

 

Q6 今後の展望を教えてください。

まずはソロの作品として創作し、その後はメンバーを募り長編の作品にしたいと思っています。
これからもリサーチとクリエーションを重ねて時間をかけて作品を暖めたいです。
また新長田を訪れたいです。

 

 


 

 

リサーチ協力者

岸本茉夕(ダンサー)
前川友萌香(ダンサー)
秋田乃梨子(ダンサー)

 

この記事に登場する人

No.44

山口なぎさ

桜美林大学演劇専修卒業。在学時は木佐貫邦子に師事。断片的な記憶や景色、生活を自身の内側から溢れるものと結えてダンス作品をつくり、踊る。自主制作やダンサーとしての活動のほかCMやMVの出演、振付アシスタントなど活動を展開中。

2025年4月7日 時点

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