RRAレポート 櫻井拓斗

劇場〈ArtTheater dB KOBE〉を拠点に、自身の表現探求や身体の鍛錬のためのリサーチやダンストレーニングなどを行う『dBリサーチ・レジデンス・アーティスト』。2025年度は4月〜6月の約3か月間に16組のアーティストが滞在します。
今回は、6月1日〜6月15日にかけて滞在した櫻井拓斗さんの滞在記録を公開します。
櫻井拓斗
【滞在期間:6月1日(日)~6月15日(日)】
6月1日
新長田到着 新長田まち歩き(靴っこ祭りなど)など
6月2日
劇場リサーチ AZUMI PIANOによる「暗闇ピアノ」参加 など
6月3日
劇場リサーチ はっぴーの家ろっけん見学 バイソン句会など
6月4日
喫茶 パープレイにてモーニング Studio PLOW プラウでのリサーチ(天野朝陽さん参加)など
6月5日
劇場集中リサーチ 新長田匂い観光 など
6月6日
長田区 兵庫区周辺の工場見学 劇場リサーチなど
6月7日
元町高架下、有馬温泉などのフィールドワーク
6月8日
東尻池のシェアハウスにてリサーチ作業など
6月9日
劇場リサーチなど
6月10日
レジデンス写真の撮影 劇場リサーチ(箱馬を転がす)など
6月11日
劇場リサーチ オープンシアターに向けて
6月12日
劇場リサーチ オープンシアターに向けて
6月13日
劇場リサーチ オープンシアターに向けて
6月14日
オープンシアター(10:00~18:00)
6月15日
劇場リサーチまとめ
Q1 レジデンスの目的を教えてください
自身が近年探求しているオブジェクトとフィジカルの合成によってダンスを生む”アンビエントダンス”という制作手法を探求するためにレジデンスを決めました。特に、リサーチする際に過ごす土地を変えることでのリサーチの変化や、考えの変化を期待していました。
Q2 どのようなリサーチや実験を行いましたか?
ダンスの生成の一歩手前、オブジェクトとの合成を大きな目標に、その方法をリサーチしました。
オブジェクトを選ぶ意図や、生みだそうとしている関係性を客観的に考えたりしながら、「動いてはセルフ・フィードバックをする。」という作業を繰り返しました。
初期は手当たり次第、劇場にあるオブジェクトや新長田で出会ったオブジェクトをもとにムーブメントリサーチを行いました。
中盤には、よりミニマムに箱馬を1時間かけて傾けるなどの作業を繰り返しました。後半はオープンシアターに向け、より具体的にこの手法を上演に適応させる方法を模索しました。
Q3 印象的な瞬間(エピソード)があれば教えてください
一人での滞在だったので、宿泊先のシェアハウスが思っていたよりもよく機能しました。
同時期に滞在している、アーティストの皆さんとの会話から生まれる気づきが多くとても刺激的でした。
とにかく、滞在中に出会った人々や環境に期待を越えて強く影響されながら自身の考えや方法を客観的に見ることができました。この2週間でも明確な変化を実感しています。
Q4 今回のリサーチで収穫はありましたか?
シンプルに、ムーブメントリサーチのみを行う気持ちで来ていましたが、紆余曲折あり最終的にはオープンシアターでフィードバックをいただけるなど来場者と交流する有意義な時間になりました。1番の収穫は、自分の今までの取り組みを長時間かけて引いて見られたことです。成果に急がず時間をかけて集中できることで、凝り固まっている部分や探求できていない箇所に面白みを感じながら取り組むことができました。そのため、現在は2週間前とは違った”アンビエントダンス”の可能性を感じることができています。
オープンシアターでの上演
Q5 dBスタッフ鈴木と撮影した写真について / 撮影場所を決めた理由
「ArtTheater dB KOBE」
新長田には魅力的なロケーションが多く、なかなか一つに決めきれなかったのですが、最終的には一番長く時間を過ごしたであろう「DANCE BOXの劇場」で撮影することにしました。今回の写真は、リサーチに付き合ってくれた“箱馬”とのツーショットです。この場所には特別な思い入れがあります。これまでの経験の中で、劇場という空間でこれほどじっくりリサーチできる機会はなかなかありませんでした。街を歩いて何かを吸収し、それを持ってここに戻ってアウトプットする——普段の稽古場では得られない、独特の感覚があったように思います。私にとってこの場所は、まるで“精神と時の部屋”のような空間だったのかもしれません(笑)。
だからこそ、最終的にこの劇場を「生み出す場」として選んだのだと思います。
Q6 今後の展望を教えてください
オブジェクトとフィジカルの関係性に新たな”共犯者”という言語を得ることができました。
また、構造的な取り組みであるゆえの冷たさに温度感を持たせる意識と興味も芽生えました。
Macではなくて、Macintoshを作りたいみたいな気持ちですかね。今後はこの観点を持ってリサーチ、クリエイションを深めていきたいと考えています。
リサーチ協力者(敬称略)
天野 朝陽(ダンサー)
岩本 順平(一般社団法人DOR)
この記事に登場する人
櫻井拓斗
ダンサー、演出家、サウンドアーティスト。『夢見の余韻』作・出演でセッションハウスアワード2023未来賞受賞。ダンサーとして、伊藤直子、近藤良平らの作品、TOKYO2020開会式等に参加。サウンドアーティストとして、山下残、山瀬茉莉などの作品に参加。芸術文化観光専門職大学1期生。現在はまつもと市民芸術館StepMにダンス作家として参加し、長野県松本市を拠点に活動中。
2025年6月10日 時点