RRAレポート 長野里音+森岡美結菜

劇場〈ArtTheater dB KOBE〉を拠点に、自身の表現探求や身体の鍛錬のためのリサーチやダンストレーニングなどを行う『dBリサーチ・レジデンス・アーティスト』。2025年度は4月〜6月の約3か月間に16組のアーティストが滞在します。
今回は、4月〜6月にわたって滞在した長野里音さん・森岡美結菜さんの滞在記録を公開します。
長野里音+森岡美結菜
【滞在期間:4月7日(月)、5月7日(水)〜8日(木)、6月16日(月)~6月27日(金)】
4月7日
ミーティング
30分の即興に挑戦してみる
5月7日〜8日
街歩き
ユニゾンについての検討
5月18日
やさしいコンテンポラリーダンスクラスに参加
5月29日
篠崎芽美さんと交流
6月16日〜18日
即興で踊るオープンリサーチ(30分Ver.)
布や毛糸を使ったワークの検討
6月19日
即興で踊るオープンリサーチ(30分Ver.)
6月20日
真陽デイサービス エクササイズ講師 訪問
6月23日
mazukagasu&Nishi Junnosuke「20分作品のコンペ提出に向けた撮影と公開リハーサル」の鑑賞
即興演奏のワークの検討。
6月24日〜25日
毛糸を使ったワークの検討
6月26日
即興で踊るオープンリサーチ(1時間Ver.)
6月27日
布と毛糸のワークの発展として、劇場内にインスタレーションを作る
「布/毛糸のワークを考えてみる」の様子
Q1 レジデンスの目的を教えてください
森岡さんと一緒に未就学児対象のダンスワークショップを行ってきた中で生まれた課題や疑問を、時間をかけて問いたいという思いからリサーチレジデンスに参加しました。
ワークショップで使用してきたマテリアルの可能性を模索するとともに、なにからダンスが生まれるのか、私たちは何をダンスと思うのかを考えていくリサーチを行いました。
Q2 どのようなリサーチや実験を行いましたか?
主に二つの軸でリサーチを進めていきました。
①ワークショップのためのワークを考えてみる
・布、毛糸を使ったワーク
・即興演奏のワークから、ダンスにおける「駆け引き」の面白さを考えてみる
②即興で踊ることに向き合うためのオープンリサーチ
・即興でおどることへの苦手意識を逆手に取り、ダンスと向き合うためのオープンリサーチを行いました。なにからダンスを立ち上げていくのかを問うことを目的に、一人で30分または1時間、即興でおどるというリサーチでした。
Q3 印象的な瞬間(エピソード)があれば教えてください。
リサーチ中に生み出されたワークを真陽デイサービスで実践させていただく機会があり、利用者の皆様が積極的に取り組んでくださったことで、未完成だったワークがカタチになっていったことが印象的でした。また、リサーチ中に、面白いと思える要素が見当たらず悶々とした時間を過ごすこともありましたが、とにかく何かやってみることで意図せず面白いアイディアに出会えました。(森岡)
RRAに参加されていた篠崎芽美さんと交流させていただき、子ども向けのワークショップのあれこれをお聞きできたことがとても印象に残っています。今後ワークショップを続けていくことへの不安や展望をお話しさせていただき、「コンテンポラリーダンスであるべきだ」という力強い言葉を投げかけてくだったことは、今後ダンスを続けていくための活力になると感じています。(長野)
6/20 真陽デイサービスでの様子
Q4 今回のリサーチで収穫はありましたか?
即興のオープンリサーチに関して、即興的なことに慣れていったこと、オープンリサーチを企画したことで私たち以外の考え方を取り入れることができたこと。また、即興性がありながらも、目的をもったタスクが必要なのではないかということを考えることができました。
ワークショップのためのワークのリサーチに関しては、今の私たちが考え提供できるワークをもっと探して、それを伝えていきたいと思いました。(森岡)
私はどのようなダンスを見たいのか。たとえそれが暫定的な答えしか見つからなくても、少しでも明確にしてリサーチしていくことで、必ずなにかしらを見つけることができるのだと実感し、リサーチのお作法みたいなことを学ぶことができました。
また、森岡さんと、とことん対話しながらワークを見つけていくこととそれに必要な身体性をリサーチした時間は、ダンスの手間を見つける旅に出たような感覚でした。作品づくりのためではないダンスのためのリサーチをすることの難しさと共に、枠組みに捉われないことの面白さを味わうことができたことが一番の収穫だと感じています。(長野)
Q5 dBスタッフ鈴木と撮影した写真について / 撮影場所を決めた理由は?
「ArtTheater dB KOBE内にある黄色い螺旋階段」
劇場内にある黄色い螺旋階段を選んだ理由は、国内ダンス留学8期の成果公演『ESCAPIST』 で螺旋階段を使ったシーンにとても思い入れがあったからです。ブラックボックスに映える黄色、地上と天井を永遠に繋いでくれるかのような螺旋がとても好きなので撮影していただきました。また、撮影時に突如、dBスタッフの方が照明を当ててくださり、さらに螺旋階段の魅力を感じることができたのが嬉しかったです、ありがとうございました。(長野)
Q6 今後の展望を教えてください。
リサーチ中に出たアイディアをどのようにかたちにしていけるか考え、実践していきたいです。
また、即興のリサーチも、タスクを加えていくことでもっと発展させていけそうだなと思いました。(森岡)
二人で出した沢山のアイディアを、子どもから大人まで、沢山の方々にシェアする機会をつくっていけたらいいなと思います。人と関わることで生まれる新たな可能性を見つけていきたいです。(長野)
即興でおどるオープンリサーチの様子
リサーチ協力(敬称略)
やさしいコンテンポラリーダンスクラス
真陽地域福祉センター
篠崎芽美さん(ダンサー/ダンススル会)
オープンリサーチに参加してくださった皆様
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術等総合支援事業(芸術家等人材育成))|独立行政法人日本芸術文化振興会
この記事に登場する人
長野里音
神戸出身。幼少よりバレエを始め、大学在学中、コンテンポラリーダンスに興味を持つ。卒業後、NPO法人DANCE BOX主催「国内ダンス留学@神戸8期」に参加。
2023年度 dBアソシエイト・ダンサーとして、余越保子、ピチェ・クランチェン、安永ひよりの作品に出演する。
その他、砂連尾理 ・寺田みさこ、安本亜佐美 等の作品に出演。
地上から空中までを踊り場と捉え、ダンサーとして国内外で活動している。
2025年5月20日 時点
森岡美結菜
大阪府出身、在住。幼少期より、法村友井バレエ学校にてクラシックバレエを学ぶ。同時期にエレクトーンを習い、踊りと音楽から表現の楽しさを学んだ。
2023年神戸女学院大学音楽学部 舞踊専攻卒業。コンテンポラリーダンス、マーサグラハムテクニックなどを学ぶ。卒業制作では、幼少期の経験から舞踊作品に自身で作曲した曲を取り入れた。
この8ヶ月で、これまでの私の経験と、新長田での新生活で経験したことから生み出される「私」の踊りを更に追求し、コンテンポラリーダンサーとして活動できる力を身につけたい。
2023年9月10日 時点