RRAレポート 高瀬瑶子

劇場〈ArtTheater dB KOBE〉を拠点に、自身の表現探求や身体の鍛錬のためのリサーチやダンストレーニングなどを行う『dBリサーチ・レジデンス・アーティスト』。2025年度は4月〜6月の約3か月間に16組のアーティストが滞在しました。
今回は、4月〜6月にわたって滞在した高瀬瑶子さんの滞在記録を公開します。
高瀬瑶子
【滞在期間:4月7日(月)~6月30日(月)】
4月7日〜
・ミーティング
・トレーニング
・ソロ作品のリサーチ
4月14日〜
・トレーニング
・ソロ作品リサーチ(マテリアルと身体、小説を読み直す)
・dBスタッフ鈴木優さんと新長田の街で写真撮影
4月21日〜
・トレーニング
・ソロ作品リサーチ
4月28日〜
・オープンイベントの相談
・オープンイベントに向けて構想を考える
5月5日〜
・トレーニング
・ソロ作品ひたすらリサーチ(静謐かつ鋭い身体、密度)
・音を作り始める
5月19日〜
・オープンイベント1回目【10分間のダンスと「?」を共有する時間】
清田鮎子さん、千葉りか子さん、三浦雨林さん他参加者の方と話す
・音と身体の関係、時間の扱い方をリサーチ
5月26日
・オープンイベント2回目【10分間のダンスと「?」を共有する時間】
dBスタッフの方と話す
5月27日
・篠崎芽美さん、dBスタッフの方々とstudio PLOW近くのお店でランチ
5月28日
・オープンイベント3回目【10分間のダンスと「?」を共有する時間】
篠崎芽美さん、下村唯さん、dBスタッフの方と話す
6月2日〜
・「深海ダンス図鑑」斉藤綾子さんとムーブメントリサーチ
・トレーニング
6月23日〜
・岩本順平さんと話す
・テープライト、ワイヤーライト、懐中電灯、銀シートなどの小物を使い、「発光」の実験
・衣装探し
・斉藤綾子さん、ならさきゆきのさん、岩本順平さんと写真撮影
・フィードバック
4/21 ソロ作品創作@dB
Q1 レジデンスの目的を教えてください
今年は、ソロ作品の創作と、「まちなか×DANCEプロジェクト」の一環としてスタートした「深海ダンス図鑑」のアップデートを目指して、レジデンスに参加しました。
昨年度もRRAの機会をいただきましたが、その時間が私の活動にとってとても実りあるものであり、今年の活動への足がかりとなりました。
さらに、劇場という非日常的な空間に身を置くことは、日々の生活から自然と切り離され、トレーニング以外にもダンサーとして必要な「余白」を育む、貴重な機会だと感じています。そうした「余白」を大切にする時間の使い方も、今回の目的の一つです。
Q2 どのようなリサーチや実験を行いましたか?
小説を出発点としたソロ作品の創作、そして「深海ダンス図鑑」のためのリサーチを行いました。
昨年度は、発表を目的とせず、ひたすらリサーチとトレーニングに没頭する日々でした。
その時間も充実していたのですが、そのままにしておくと、まるごと記憶の中に埋もれてしまいそうだったので、今年は「形にする」ことを意識しました。
ソロ作品に関しては、昨年のリサーチレジデンスで芽生えた「タネ」をどう育てるか、試行錯誤を重ねました。
創作に集中するあまり、スタジオにこもりがちになりそうだったので、レジデンスならではの醍醐味を取り戻すためにも、3日間のオープンイベントを開催することにしました。
このイベントでは、10分間のソロ作品を上演し、その後、作品について語り合ったり、日常の中の違和感を共有したりしました。
創作過程をともに見ていただき、参加者の方々が言葉を通して作品に多角的な視点を与えてくれたことが、とてもありがたく、今後のヒントにもなりました。
4/7 ソロ作品創作@dB
「深海ダンス図鑑」については、2023年度から上演を続けている作品をさらにブラッシュアップするため、新たなメンバーとともにムーブメントリサーチを行いました。
細胞をイメージして身体を動かしてみたり、「発光」をテーマとした撮影を兼ねた実験も行いました。
身の回りの素材を持ち寄って試しながら、「これはどう映る?」「もっとこうしてみよう」と、カメラマンの岩本さんに撮影していただきながらの実験は、ワクワクに満ちた時間でした。
「深海ダンス図鑑」[発光]のリサーチ&撮影
Q3 印象的な瞬間(エピソード)があれば教えてください。
自身の活動拠点が神戸にあるため、レジデンスの意義を十分に味わえているのかとふと思う瞬間もありました。
しかし、オープンイベントを設けたことで、私の活動だけでなく、その場にいた他のアーティストの方々とも活動をシェアし合うことができ、人と人がつながる瞬間の良さを改めて実感しました。
また、「深海ダンス図鑑」の「発光」をテーマにした撮影時には、岩本さんやダンサーたちと共に、「どうすればイメージが立ち上がるか?」を試行錯誤しながらつくっていく、まさに実験のような時間が印象に残っています。
6/26 「深海ダンス図鑑」[発光]のリサーチ
Q4 今回のリサーチで収穫はありましたか?
お話できなかったりお会いできなかったRRAアーティストの方々もいらっしゃいましたが、短い会話の中でも、その活動に対する姿勢が感じられ、触発されました。
また、没頭する時間と、交流する時間をバランスよく過ごすことができたことが、創作過程において良い循環を生んだように感じています。
日常のリズムから少し離れ、自分に向き合い没頭する時間は、今の私にとってとても大切なものでした。
このレジデンスで過ごした時間は、踊ることだけでなく、日々の生活にもじんわりといい影響を与えてくれているのを実感しています。
5/19 オープンイベント「10分間のダンスと「?」を共有する時間」
Q5 dBスタッフ鈴木と撮影した写真について / 撮影場所を決めた理由は?
「丸五市場の一角」
家と劇場の往復になりがちで、まだ足を踏み入れたことのない場所が沢山あるのですが、中間アヤカさんのスタジオ「house next door」を目指し、商店街を歩いているとどこを歩いているのか分からなくなりました。
スマホに頼らず進む中で、いきなり現れたドアの佇まいに目が留まりました。
「このドア、開けて大丈夫……?」と感じた、あの少しの緊張感とワクワク感が印象的で、撮影場所に選びました。
Q6 今後の展望を教えてください。
オープンイベントでいただいた意見も参考にしつつ、ソロ作品をさらにブラッシュアップし、発表へとつなげていきたいと考えています。
「深海ダンス図鑑」は、身体性をより深めながら、11月に予定している神戸の街中でのパフォーマンスに向けて引き続きリサーチを進めていきます。
その先も、この作品たちを育て続け、上演の場を模索していきたいです。
6/30 「深海ダンス図鑑」[発光]のリサーチ&撮影
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高瀬瑶子さんは、「国内ダンス留学@神戸11期 Solo Dance Artist」として、2025年8月24日(土)『八月二十四日、はじまりのソロ・ダンス』で初回公演を行います。
今後の高瀬瑶子さんの活動にも、ご期待ください!
リサーチ協力(敬称略)
オープンイベントご参加の皆さま:
清田鮎子
千葉りか子
三浦雨林
篠崎芽美
他
「深海ダンス図鑑」リサーチ:
斎藤綾子
ならさきゆきの
岩本順平(一般社団法人DOR 共同代表 PHOTOGRAPHER/PRODUCER)
dBスタッフの皆さま
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術等総合支援事業(芸術家等人材育成))|独立行政法人日本芸術文化振興会
この記事に登場する人
高瀬瑶子
幼少よりモダンバレエを始め、16歳より橘バレエ学校にてクラシックバレエを学ぶ。出産を経て進化/退化する身体との対話を重ね、”骨で動ける身体”をテーマにダンサーとして活動中。ジゼル・ヴィエンヌ、白井晃、森山開次、中村恩恵、近藤良平、青木尚哉等の作品に出演。近年では能や演劇、光など他ジャンルとの協働により生まれる表現も探究している。また、ダンサーならではのアプローチで子どもの教育に携わるべくワークショップなども行う。
2024年5月8日 時点