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RRAレポート 高瀬瑶子

劇場<ArtTheater dB KOBE>を拠点に自身の表現探求や身体の鍛錬のための実験的なリサーチやダンストレーニングなどを行う、国内ダンス留学@神戸10期『dBリサーチ・レジデンスアーティスト(dB RRA)』。 4月17日〜7月31日に滞在の高瀬瑶子さんによる活動記録を公開します。

高瀬瑶子 【滞在期間:4/17〜7/31】

 

4/22~ 作品制作:身体と空間について
「深海ダンス図鑑」リサーチ:上演環境が変わる事で起こること
4/29~ 作品制作:不在のデュオ
5/6~ 身体ワーク:景色・物の性質を取り入れる等
作品制作:小説の章ごとの情景を考える
メモ✏︎無機質な、空っぽな、ニュートラルな中間色の、富裕な、抜け目のない
5/13~ 作品制作:空間への違和感ー空間の中に空間がある
メモ✏︎正面性、客席の配置、左右非対称
5/20~ 作品制作:動きに関係する言葉と動きのタスクを連動させる
5/27~ 作品制作:不在のデュオ
6/3~ 作品制作:小説を読む
「深海ダンス図鑑」リサーチ:新たなシーンを追加

✏︎メモ:無駄な器官、孔雀の羽、パラサイト
6/10~ 身体ワーク:「右手の景色」を撮る
「深海ダンス図鑑」リサーチ:新たなシーンを作る
6/24~ idea platformの読書会に参加
武井琴さんWSに参加
7/3~ 作品制作:テーマに沿う体のアプローチ
「深海ダンス図鑑」リサーチ:言葉掛けについて等
メモ✏︎ジェンダーバイアス、肋骨、培養液、バグ、ミミック
7/8~ 作品制作:花とゴミ袋
長尾明実さん、サブリーナ・フートさんとエクスチェンジ
メモ✏︎ある程度で終わりが来ること 「今ここ」を感じながら過去の遊びに戻る
7/19~ 作品制作:テーマ「高揚」と「子宮」の実験
メモ✏︎方丈記の冒頭、ダイナミックステイト、相転移、phase

 

 


新たな身体を想像するリサーチ
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身体感覚のリサーチ

 

Q1 レジデンスの目的を教えてください。

日常的なトレーニングをベースに、まちなか×DANCEプロジェクトとしてスタートした 「深海ダンス図鑑」のパフォーマンスや子供を対象としたワークショップのリサーチ、ずっと手をつけたかった三島由紀夫『憂国』の小説をベースに身体感覚のリサーチをしました。また、現在のワークライフバランスの中で、徹底的に自分の時間を作りたかったので、劇場という特殊な空間で発表を伴わない実験やリサーチをする贅沢な機会があることがありがたかったです。

 

Q2 どのようなリサーチや実験を行いましたか?

劇場では主に小説をベースとした身体感覚のリサーチをしました。劇場を真っ暗にし照明の効果を実験したり、ゴミ袋を使って不自由な中でどんな動きができるかを試してみたり、デュオの種作りをしました。「深海ダンス図鑑」のリサーチでは、ブラッシュアップするために何が必要かを話し合い、 美術を見直したり、新たなシーンを作りました。

身体感覚のリサーチ:不在のデュオ

 

Q3 新長田の好きな場所を教えてください。

ホルス 新長田店:家族がここのパンを食べると「どこの?」と言うので
新長田合同庁舎:図書館があってちょこっと寄れるのがいい
空地文庫:ななこちゃん(店主の小松菜々子)らしさが漂っている空気の中で、ゆっくり本を眺めたい
マウントエベレスト:食べきれないけどチーズナンが美味しい

 

Q4 印象的な瞬間を教えてください。

劇場にある記憶と対話しているような時間が印象に残っています。目的に向かって突き進む時間も好きですが、直近のゴールがないからこそ寄り道を楽しめた時間だったと思います。全く関係のないことが浮かんできたり、1ヶ月後にそれが繋がったり消えていったり、 ずっと置き去りにしていたものを取りに戻ったり。意図せずふっと移行していく瞬間を味わ いました。 アウトプットが続く日々の中、どこか空っぽだった部分が満たされ、溢れるというよりは次 のフェーズに移行していく感覚も印象的でした。まず自分だけの時間を持った後に、他のRRAアーティストと共に作業をしたり話をしたことも良い影響を与えたのかもしれません。

「深海ダンス図鑑」の東遊園地でのパフォーマンスでは、踊っているのにも関わらずお構いなく子供たちが至近距離にずっといたことが印象的でした。一緒に踊ったり、話しかけてくれたり、静かに凝視したりそれぞれの反応を間近で感じられたことが素敵な時間でした。そして、そんな子供達に危険が及ばないように状況を見守りつつ、適切な言葉掛けをして下さ る温かい大人の佇まいがとても美しく、嬉しかったです。「パフォーマンスはこう見るも の」という考えを取り払えたからこそ、その状況が自発的に生まれた印象的な瞬間でした。

「深海ダンス図鑑」パフォーマンス@東遊園地

 

Q5 なにか収穫はありましたか?

作品制作のリサーチでは、やってみたいと思ったことをすぐに劇場で試せたことがとても有意義でした。1人の時間を堪能することで、他人と共有したいことが明確になり、次のステップに進むきっかけができました。また、生活の中に余白が必要であることも強く感じました。他のRRAアーティストとの交流では、考え方やアプローチに刺激を受けるだけでなく、日 常的に感じている危惧や新しい身体感覚に思いを馳せる時間をもてたことが良かったです。「深海ダンス図鑑」のパフォーマンスや子どもを対象としたワークショップでは、ダンスを通じて新しい視点を持つ、状況が柔らかく変化する様子を目の当たりにしました。設置された空間の使い方を変えるだけで、ダンサーやスタッフの間で「だとしたら何ができるか!?」と建設的な話し合いができ、その状況が自発的に生まれる瞬間を体感しました。 WSに参加してくれた子どもたちや保護者から「こんな風に身体が使えるとは知らなかっ た」「自由で創造的で楽しい時間だった」といった感想をいただき、活動の価値を再認識し、 継続していくモチベーションが生まれました。

「深海ダンス図鑑」こどもワークショップ つくる!動く!@KIITO

 

Q6 今後の展望を教えてください。

作品制作のリサーチを経て、共有したい内容の輪郭が見えてきました。これからはダンサー や異業種の方と共同作業をしながら形にしていきたいと思います。 「深海ダンス図鑑」のリサーチについては、ブラッシュアップしながら継続していきます。 ダンスに関する作業以外にも多くの作業が必要となるため、協力者を募りつつ、実践しながら一つずつ乗り越えていきたいと思います。 振付家やアーティストを育成する場でもあるDANCE BOXでRRAをするにあたり、「トレーニングで使用してもいい」「発表の機会を作っても作らなくてもいい」という言葉をもらい、それぞれのアーティストの立場や考え方を尊重してくれているDANCE BOXの在り方を改めて感じました。

 


協力者

サブリーナ・フート(振付家、ダンサー、スローイスト)

武井琴 (ダンサー・映像作家)

長尾明実(振付家、ダンサー、スローイスト)

長野里音(ダンサー)

ならさきゆきの(ムーブメントアーティスト)

藤田彩佳(ダンスアーティスト)

idea platform

Dance Boxスタッフの方々

この記事に登場する人

Masaaki Tanaka

高瀬瑶子

幼少よりモダンバレエを始め、16歳より橘バレエ学校にてクラシックバレエを学ぶ。出産を経て進化/退化する身体との対話を重ね、”骨で動ける身体”をテーマにダンサーとして活動中。ジゼル・ヴィエンヌ、白井晃、森山開次、中村恩恵、近藤良平、青木尚哉等の作品に出演。近年では能や演劇、光など他ジャンルとの協働により生まれる表現も探究している。また、ダンサーならではのアプローチで子どもの教育に携わるべくワークショップなども行う。

2024年5月8日 時点

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