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【国内ダンス留学@神戸】修了生インタビューvol.2

プロのダンサーや振付家、制作者を志す人を対象とした育成プログラム「国内ダンス留学@神戸」の8期生募集を開始しました。「国内ダンス留学@神戸」では、神戸・新長田の劇場ArtTheater dB KOBEを拠点に、2022年7月末から2023年3月までの8ヶ月間、座学・実技を通して徹底してダンスに取り組みます。

本企画では、ダンス留学修了生にインタビューをし、ダンス留学の8ヶ月を振り返るとともに、現在の活動や留学で得られた気づき、そしてこれからこのプログラムに挑戦しようとする8期生への想いなどを語っていただきます。

第2弾は2016年度に実施された国内ダンス留学@神戸 5期生にインタビューを実施。
5期では「ダンサー・振付家コース」にプログラムを一体化し、第一線で活躍する8名の振付家による全8公演と成果公演を実施。全国から11名のダンサーが集いました。そのなかでも今回は、池上たっくんさん、武井琴さん、そして山野邉明香さんにお話を伺います。

Q. 自己紹介と最近の活動を聞かせてください。

 

武井琴(以下、武井):国内ダンス留学5期修了者の武井琴です。修了してからは、ダンスの活動と並行してダンスとコマ撮りアニメーションを融合させた映像制作に取り組んでいます。現在は群馬県の北軽井沢を拠点にしながら、さまざまな地域に赴いて滞在制作する活動を5年ほど続けています。2020年には、DANCE BOX企画制作の神戸市立王子動物園のダンスレクチャー動画の演出・映像ディレクションを担当しました。今は長野県の木曽地域に来ています。昨年参加したアーティストインレジデンスがきっかけでこの場所とご縁ができ、今秋に開催される芸術祭のためのリサーチをしています。

 

山野邉明香(以下、山野邉):わたしは5期のダンス留学を修了してからは、地元の横浜にもどり、自身の小作品を発表したり、映像作品や、インプロビゼーションのイベントに出演したりもしていますが、ここ数年は他の振付家の作品にダンサーとして参加する活動が主です。例えば昨年の12月には5期の講師でもあった山崎広太さん振付の「Becoming an Invisible City Performance Project〈青山編〉──見えない都市」という作品に主演しました。ダンス留学に参加する前は黒沢美香&ダンサーズに所属し、4年間活動していました。まだ未発表ですが今年もいろいろとダンス作品に出演する予定です。

 

池上たっくん(以下、池上):ぼくは兵庫県出身で、振付家・ダンサーとして活動しています。ダンス留学5期を修了してからは、そのご縁をもとに振付家の平原慎太郎さんにお声をかけていただき、東京に移住してOrganWorks(オルガンワークス)のメンバーとして活動しています。昨年は、二期会ニューウェーブ・オペラ劇場というオペラの舞台で「セルセ」という演目にダンサー出演しました。また、OrganWorksでは「WOLF」に出演したり、先日は、平原慎太郎さんプロデュース公演「B,C&D」というショーケースにて、作品を創作し出演しています。他にも平原慎太郎さんが振り付けを担当した東京オリンピック2020にはアシスタントとして参加しています。今年の10月には神奈川県民ホールで開館50周年記念オペラシリーズのフィリップ・グラス/ロバート・ウィルソン「浜辺のアインシュタイン」に出演が決まっています。他の活動で言うと、自身の振付作品の発表も行っていて、昨年も1つ新作を発表しました。

(写真:国内ダンス留学@神戸5期 Newcomer/Showcase#8 キム・ジェドク振付作品「Darkness Poomba〜新長田バージョン〜」より)

Q. ダンス留学の8ヶ月間を振り返って感想を教えてください。

 

───国内ダンス留学5期は、ダンサーを育成することに重点を置いたプログラムに一新した年でした。1〜4期は振付家コース、ダンサーコース、そして制作者コースに分かれて、それぞれの分野で”まなぶ”、”つくる”、そして”磨く”と言う段階でプログラムを設定していました。5期の場合はコースを分けずさまざまなアーティストの現場に出演者として立ち会うことで、振付家としての手法を学ぶことを狙いとして、公演ベースのカリキュラムを組みました。そのため、8ヶ月間で計9公演をこなすという、これまでで最多の作品上演を行い、すごく過酷な現場でもあったと思います。生活面も含めて8ヶ月間を振り返った感想を教えてください。

 

池上:ぼくにとってこの8ヶ月間はとにかく刺激のある日々だったなと感じています。プロとして活動しているアーティストの創作の現場に立ち会い、共有できるというのはとても貴重な機会でした。そのなかで、それぞれのアーティストのマニアックな部分まで感じました。より深いマニアックの部分は、映像や上演では知れない領域だと思っていて、直接アーティストに触れ、時間を共有したからこそ感じ取れたのだと思います。

 

山野邉:わたしもこの8ヶ月間はすごく大きな財産になっていると感じます。いろんな作家の身体や作品に対する哲学を、身体でもって体験することができたのは貴重な経験でした。

 

武井:わたしも二人が言うように後にも先にもない体験ができたと思っています。作品によって身体の使い方も、使う筋肉も全然違うし、振付家がわたしたち出演者にアプローチする手法もさまざまでした。だからこそ、8ヶ月間で9つの作品に出演し、その都度身体も頭も違う世界に入っていく、連れていくという切り替えがすごく大変でした。

 

山野邉:わたしも切り替えに苦労しました。怪我をしないことを一番に考えて、翌日もちゃんと動ける状態にするという、身体のコンディションに耳を傾けることに注力していました。それに加え、精神状態も整える必要がありました。公演までの期間がそれぞれタイトにもかかわらず、作家ごとで求めることは全然違うので切り替えが難しかったです。本番に向けて士気を高めていくんですけど、本番が終わっても一息つくまもなく次の本番が控えている状態だったので、エンジンをかけ続けるメンタル面を保つのはとても大切で、辛い部分でした。だけど、お好み焼きとか、新長田にはおいしいものを楽しみにしたりしてなんとかやっていけました。

 

武井:銭湯もとてもありがたかったよね。劇場は地域に開かれている場所だからこそ、スタッフだけでなく街の人の出入りも多かったです。その関わってくれる人々はすごく温かいんだけど、そっとしておいてくれる部分もあって、絶妙な距離感で見守ってくれていました。困っていたらすぐに手を差し伸べてくれるけど、干渉しすぎない、私にとってすごくちょうどいい関係性でした。関西はわたしにとって縁もゆかりもない場所で、最初は不安でしたが、自分と同じ立場で作品に関わる5期生がいて、スタッフがいて、見守ってくれる人がいたから心強く、ダンスだけに集中してどっぷりつかれる、考えられる環境になっていました。

 

池上:ダンス留学は留学という言葉が本当にふさわしいなと思います。ぼくは兵庫県出身でいわばご近所さんだけど、特定の場所に滞在してそのなかでダンスや生活をしたからこそ、自動的に集中力が高められる環境になっていて、ダンス漬けの日々に身を投じられたと思います。それが日本で経験できたのは今思うと不思議な体験です。

(写真:国内ダンス留学@神戸5期成果上演後のアフタートークの様子)

Q. ダンス留学に参加したことでの効果や変化したことはありますか?

 

池上:留学の8ヶ月間は、自分の身体に直結して物事を考える環境だったので、自分の存在をすごく理解する時間になったと思っています。自分は何に興味があり、自分の身体は何をしている時がアクティブで刺激を受けているのか、というような自問自答をより深く行えました。学びばかりじゃなく、自分から沸き立つものを知ることができました。だから修了後に何をやっていきたいと思っているのか、自分の奥深くで感じていた部分を知ることができたし、今の活動に導いてくれたのかなと感じています。

 

武井:自分とは異なる人の考え方にたくさん触れたという体験が今の私にも活かされています。修了後に、ダンスをしているときだけでなく、生活のあらゆる場面で振付家の方たちの言葉や考え方がスッと自分に入ってくることがよくあります。だからあの時の経験は、修了後の進路に関わらず、絶対に自分の役に立っていると思います。ダンス留学中に消化しきれなかった、自分の中で答えが見つけられなかったことも、後になって腑に落ちることもありました。ダンス留学だったけれど、自分の暮らしや生活にもすごく影響のある体験だったと思います。

 

山野邉:わたしは、最近じわじわと仲間ができたことのありがたみを感じています。5期だけじゃなく、ダンス留学修了者は同じ苦労を通過している同郷のような気持ちになって、遠くに居ても、何年経っても応援したいという気持ちがあります。DANCE BOXという場所があるからこそ、この関係性は続いていて、育っていけるし、何気なく帰ってもこれる。そんな場所と繋がりができたのはすごく自分にとってすごく大きな財産です。

国内ダンス留学@神戸5期 卒業式

Q. 最後に、ダンス留学8期を目指すみなさんにメッセージをお願いします!

 

池上:ぼくは何かを学びたいと思った時に、自分にどれだけ投資ができるのかを考える、やってみるということはすごく大事だと思います。自分への投資として舞台を見たり、レッスンを受けたりすることはよくあるかもしれません。だけど、この国内ダンス留学のように新たな環境で長期滞在してダンスに没頭できる機会が得られることはすごく稀なことだと思います。自分にきちんと投資をして、自分を見つめる時間を作ることはすごく価値があることで、プロとして活動していくのであれば、そのぐらいの高い意識とクオリティを求めるべきだと思うんですよね。やっぱりそういう意識のある人たちでこの業界を高めていきたいと思っています。日々トレーニングの日々です。その中でまたどこかで出会い、同じ留学生として繋がりが持てるのを楽しみにしています。

 

武井:8期のプログラムを拝見し、ダンスの領域だけでなく、いろんな専門家が講師として関わるのがすごく魅力的でおもしろいなと思いました。さっきも言ったのですが、ダンス留学での経験は、修了後の未来がわからなくても、必ず活きていくものになると思います。今やってみたいという気持ちがあるなら、人生のどんなタイミングだったとしても、飛び込んでみてほしいです。勇気がいるかもしれませんが、興味のままに一歩を踏み出せばきっとどうにかなるし、大切な時間になると思います。

 

山野邉:わたしは、他者との関わりの中で自分の視野に幅がもたらされると思います。だから、講師や同じ留学生、スタッフなどたくさんの人に出会い、いろんな視座に立てるこの留学経験は人生をより豊かに面白くするんじゃないかと思います。そして、留学を決めた際には、ぜひ目の前にいる人や環境を大切にしてほしいなと思います。人を振付たり、振付られたり、ダンスは人間関係そのものだなと思っています。自分とは違う他者と交わるからこそ、理解できないことや受け入れられない意見にも出会うと思いますが、そういう時こそ耳を傾けて、理解する努力をしてみてほしいです。そういったことが自分自身の幅を広げて、いつのまにか何かに繋がっていくと思います。

 


左から 武井琴、山野邉明香、池上たっくん

プロフィール

武井琴(たけい・こと)

幼少期にクラシックバレエをはじめ、高校時代にコンテンポラリーダンスと出会う。大学在学中、テーマパークに就職。パフォーマーとしての勤務を経て「国内ダンス留学@神戸5期」に参加。卒業後、ダンスとコマ撮りアニメーションを融合させた映像制作に取り組み、国内外のギャラリーや芸術祭で作品を発表。ダンスボックス企画制作「ずーっといっしょダンス」の映像ディレクションを担当するほか、地域でのレジデンス事業に携わる。

 

山野邉明香(やまのべ・あすか)

ダンサー 静岡生まれ、横浜育ち。多摩美術大学美術学部芸術学科修了。大学在学中にコンテンポラリーダンスに出会う。2013−2017年、黒沢美香&ダンサーズとして活動。 黒沢美香、山崎広太など、多数の振付家の作品に出演。 NPO法人DANCE BOX主催国内ダンス留学@神戸5期生。 近年は舞台作品の他、映像作品の出演や自身の小作品の発表を通じて表現を模索している。

 

池上たっくん(いけがみ・たっくん)

1992年生まれ。兵庫県出身。振付家・ダンサー。平原慎太郎主催OrganWorksメンバー。文化庁・NPO法人DANCEBOX主催国内ダンス留学@神戸5期生卒業。近年の出演作に二期会ニューウェーブ・オペラ劇場「セルセ」、草刈民代企画『INFINITY』にてOrganWorks作品に出演、東京2020オリンピックにて、振付アシスタントとして参加し、開閉会式にダンサーとしても出演など。 10月に神奈川県民ホール開館50周年記念オペラシリーズ Vol.1 フィリップ・グラス / ロバート・ウィルソン「浜辺のアインシュタイン」に出演する。

 

国内ダンス留学@神戸5期 特設サイト:https://danceryugaku.wixsite.com/main5

 


 

「国内ダンス留学@神戸」とは・・・

プロのダンサーや振付家、制作者を志望する人を対象に、2022年7月末から2023年3月までの8ヶ月間、神戸・新長田の劇場を拠点にして、座学・実技を通して徹底してダンスに取り組むプログラムです。2012年度から実施し、これまで67名のアーティスト、制作者を輩出しています。国内外の第一線で活躍する豪華講師陣による講座やワークショップ、また、振付家を招聘しての公演、作品制作、成果上演など、8ヶ月かけて自身の身体や思考を駆使し、日々ダンスに打ち込みます。

特設サイト:https://danceryugaku.wixsite.com/main8

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