2001年に始動した「アジア・コンテンポラリーダンス・フェスティバル」は、2014年に第8回目を、また神戸での開催としては第3回目を迎えます。当フェスティバルではこれまでに、アジアおよび日本で活躍するアーティストの身体表現を通して、多様な価値観が混在しながら共生するアジアの〈現在〉を紹介してまいりました。神戸にアジアのコンテンポラリーダンスを集積することで、アジアから生まれる新しい価値観、世界観の創出を志向し、将来的にアジアのダンスにおけるひとつの拠点となることをめざしております。

 今回のフェスティバルでは、近年、国内外での活躍が目覚ましいパフォーマンス・グループ contact Gonzoの主要メンバーである塚原悠也がプログラム・ディレクターを務めます。塚原は、contact Gonzoの活動にとどまらず、一人のアーティストとして身体表現から現代美術、音楽など、さまざまな分野の国内外のアーティストと交流を続けてきました。今回のプログラムでは、塚原ならではの視点によるディレクションで、彼がこれまでに出会ったアジアのアーティトたちとともに、新作パフォーマンスを創作、上演いたします。

【パフォーマンスプログラム参加アーティスト】
岡田 利規/Toshiki Okada(劇作家・演出家・小説家・チェルフィッチュ主宰/熊本在住)
曽田 朋子/Tomoko Soda(造形作家/大阪在住)
ピチェ・クランチェン/ Pichet Klunchun (ダンサー・振付家/タイ・バンコク在住)
contact Gonzo/コンタクト・ゴンゾ(パフォーマンス・グループ/大阪在住)
スカイチャーチ/Skychurch(ハードコアバンド/フィリピン・マニラ在住)
西光 祐輔/Yusuke Nishimitsu(写真家・アーティスト/東京在住)
垣尾 優/Masaru Kakio(ダンサー・振付家/大阪在住)
ジュン・グエン=ハツシバ/ Jun Nguyen Hatsushiba(現代美術家/ベトナム・ホーチミン在住)
松本 雄吉/Yukichi Matsumoto(演出家・維新派代表/大阪在住)
アニマル・ポップ・ファミリー/Animal Pop Family(ダンサー/インドネシア・ジャカルタ在住)
クイック/QUICK(ダンサー・演出家・振付家・MuDA代表/京都在住)
DJ $hin(DJ/大阪在住)

【展示プログラム参加アーティスト】
垣尾 優 / Masaru Kakio (ダンサー・振付家)
コンタクト・ゴンゾ / contact Gonzo (パフォーマンス・グループ)
ジュン・グエン=ハツシバ / Jun Nguyen- Hatsushiba (美術家)
曽田 朋子 / Tomoko Soda (造形作家)
ドットアーキテクツ / dot architects(建築家)
チョイ・カファイ/Choy Ka-fai(アーティスト/シンガポール在住)
西光 祐輔 / Yusuke Nishimitsu (写真家・アーティスト)

日本にはたくさんの木造建築がある、住んでみると分かるが木で出来た家は呼吸がしやすい。
建物自体が呼吸をしているからだ。
訪れた人たちは、ある種のノスタルジーを超えて無意識に身体を緩める。
日本の都会でも探してみるとそういう物件はたくさんある。
バラしてみると分かるが、土壁の奥から1945年の新聞紙が出てきたりすることもある。

一方で、鉄筋とコンクリートで出来たマンションも日々たくさん建てられ、
実際にたくさんの人が暮らしている。
オートロックがあり、新しければ災害にも強い。
変わったデザインでなければ違う街に住んでも、
似たようなレイアウトの部屋にまた住むことが出来る。
ニュータウンなどは街ごとデザインされている。
素材やデザインの違いは私たちの日々の生活、考え方、動き方、それぞれに決定的な影響を与える。
そこで生まれ育った子供ならなおさらだ。
例えばカーテンは買うことも出来るし、作ることも出来る。

私たちはどこまでその選択をしているのだろうか。もしくは選択を出来る余地を残しているのか。
またその事が、アジア圏における現代のダンスを扱うフェスティバルを行う事とどう関わるのか。
そういうところから考え始めた。

同じ頃、シンガポールで知り合った男は不動産業を営んでいた。
出会った頃は雑居ビルの一室で、図太袋に詰め込んだブランドものの服を
それぞれ10$前後で売りさばいていた。
彼は船で近郊の海域をまわり、干しアワビなどの海産物や燃料を扱いつつ、
そういった服を副業的に輸送していた。
日本で売れば一万円前後はしそうなものが大量に床に転がっている。
では私たちは日本で何を見ているのか。
船が揺れる、ということをじっくりと想像してみるのは大切なことのように思う。
物だけでなく、考え方や、信じ方、様々な技法や言葉、そういったものも同じく運ばれてくる。
こういう男が日々運んでいるのかもしれない。

ここ数年で、東京から熊本に引っ越した知り合いがいる。
一方、随分と前に、熊本から大阪に出てきた知り合いもいる。
それぞれ別の理由によって行われたこの移動の交差点はどのようなところに位置するのか。

同じ頃、マニラではツインペダルのドラムセットを組んでライブの準備をしているドラマーがいた。
1980年生まれで、当然のようにメタリカやナパーム・デスなどを聴いて育ち、
兄弟とバンドを組んだ。
分厚い音を、連打したいと考えている。
「ツインペダル」という新しい発明の由来と、その広まり方にはどのような特徴が指摘できうるか。
果たして、音やスタイルだけの問題だろうか。

連絡が取れなくなったロッテルダムのフィーは船で渡ってきたベトナム人の父親の作る飯を題材に作品を作り、
同じく連絡が全く取れないハンブルグにいるはずのアリフはマレーシアにいる母親がいかに黒魔術に詳しいかを話してくれた。
二人に共通する事は「移動をした。」ということだ。
あるいは移動せざるを得なかったというべきか。

近所で、延々とミシンを動かして丸く立体的な作品を作っている友人がいる。
没頭し目がみえにくくなったり、トリップしたりすると話してくれた。
伝統的な技法を学んだが、あらたに独自に開発した技法で、糸を紡ぐことからはじめて、形にする。
その布の塊は、水を汲めたりもする。

身体がどんどん変わっていく。
日々、速度やバランスが変わる。
怪我をしたり、治ったりする。
それにより、世界の見え方も変わる。

タイの街のはずれで家と劇場を作ろうとしている友人は、
エアコンを使いたくないという理由で建物の風の通り道を考えていた。

別の日には、チベットの暫定政府と呼ばれるところに電話をした。
文化担当官についないで欲しいと伝えると、彼女は昼飯に出たと答えられた。
この土地から派生した宗教が日本にどのような人々によって伝わったのかと、
そのルートや方法を想像しながら、
今日の一般的なチベットの昼ご飯はどんなものか考えていた。
アジア圏の厨房を支配する、化学調味料はチベットにまで届いているのかを想像していた。
自分が旅をしたアジアの国々は大体そうだった。
かけ直すと彼女は、私たちの土地には仏教に根ざした伝統文化があると手短に、
忙しそうに話してくれた。
話し終わった後に、コンテンポラリー・アートと呼ばれる状態のものが必要となる条件について
新しく引っ越したマンションで考えた。
それは都市的な、あるいは自然発生的なものなのだろうか。
なぜ、新しく、異なるものが、今日必要となるのか。

当然と見えることが当然でなかったり、
全く異なる地域、異なる時代で同じことを考えていたりする。
様々な状況を、人の意思が乗り越える。
向こうを見たいと思う気持ちや、今をどうにかしたいという気持ちにより、
いろいろな技術が生まれる。
また、人々の様々な所作、日々に生み出すものからそういった断片を確認することが出来る。
このフェスティバルは、海を渡って来る今日の人たちに出会い、
そのような断片を垣間見る機会としたい。

4作品全てが共同作業による新作です。

プログラム・ディレクター
塚原 悠也
Yuya Tsukahara (contact Gonzo)

主 催:NPO法人 DANCE BOX
助成 :文化庁 平成25年度劇場音楽堂活性化事業
/神戸市 平成25年度まちの再生・活性化に寄与する文化芸術創造・創作支援助成
/平成25年度一般社団法人 私的録音補償金管理協会 sarah/公益財団法人 福武財団
後援:長田区/神戸市/神戸新聞社/ラジオ関西/サンテレビジョン/NHK神戸放送局/在大阪タイ王国総領事館
協力:維新派プリコグミヅマアートギャラリーPANTALOONミミヤマミシン
展示共催:アートエリアB1【大阪大学+NPO法人ダンスボックス+京阪電気鉄道(株)】

スタッフ・クレジット:
プログラム・ディレクター:塚原悠也
NPO法人DANCE BOXスタッフ:大谷燠、文、横堀ふみ、田中幸恵、西岡樹里、下村唯
広報:青嶋絢、大泉愛子/宣伝美術:松見拓也/イラスト:みかじり/WEB制作:内山大
翻訳:青嶋絢、勝冶真美/舞台監督:大田和司/照明:三浦あさ子/音響:西川文章

プレスリリース_2013/11/22 (フェスティバル開催概要)
プレスリリース_2014/2/1 (公演プログラム・クリエーションレポート)
Press Release_2013/11/22 (english)