チャオチャオ!ベトナム水上人形劇!2021
ベトナム、ミャンマー、朝鮮、奄美と、アジアをはじめとした多様なルーツを持つ人々が集住する長田区。長田区の在住外国人の割合は14.04%、その内ベトナム籍の住民は22.97% 約1,600名で、神戸市の中では、兵庫区に続き2番目に多い区となっています。ベトナム人の居住者が著しく増加しているこのまちですが、今でも日本人等の住民とベトナム人住民との交流はまだ十分ではありません。ゴミ出しなどの日常の文化の差異から、お互いのすれ違いが生まれていることもあります。
そこで、1000年以上の歴史があると言われる「ベトナム水上人形劇」を《触媒》にして、日本人等の地域住民とベトナム人住民をつなげるプログラムを実施。このプログラムをきっかけに、日本人等の住民とベトナム人住民の橋渡しになることを期待しました。
期間
- 2021年7月〜10月
2022年1月〜3月 会場
KICC(神戸国際交流センター)ほか
チャオチャオ!ベトナム水上人形劇!
Chương trình truyền hình online đặc biệt: CHÀO CHÀO! Múa rối nước Việt Nam!
(写真提供:タンロン水上人形劇場)
ダンス表現を中心にプログラムを展開している劇場で、「子守唄や水上人形劇って、なんでだろう?」と思われると思います。劇場という場には「上演芸術のプロフェッショナルによる“公演”を行うこと」が従来の役割の一つがありますが、劇場が位置する地域の文化芸術に関わり、新たな角度で捉え直すことも大事なことだと考えています。様々なルーツにつながる人々が集住するこの地域では、どのようなプログラムを展開していけるとよいのでしょうか。母語が異なることで、言葉による分断を起こしやすい、生活文化や価値観の違いで、不理解を起こしやすい状況が横たわります。それらの分断や不理解は、お互いの文化を知り、隣の異文化が身近なことへと姿を変えたときに、前進するのではないかと思います。それには、文化芸術を介して出会う場をつくること、出会って対話をはじめること、先ずはこの地点から進めます。文化芸術そのものには、本来的に、コミュニティーや人々、死者と生者をつなげていく役割がありました。その本質的な役割を「神戸・長田のちいさな子守唄」「チャオチャオ!ベトナム水上人形劇!」の二つのプログラムを通して開き、新たなつながりを生みだしていきたいと考えています。(横堀ふみ)
4つのプログラム
2020年より始まった「チャオチャオ!ベトナム水上人形劇!」。
今年は、子どもも大人も楽しめる工作ワークショップと、そこでつくったミニチュア水上人形劇場と人形の展示、在住外国人の”文化権”について考える勉強会、アジアの人形劇についてのウェブの特別記事の4つのプログラムを展開しました。
1.【工作ワークショップ】
チャオチャオ!ベトナム水上人形劇 工作ひろば!
ベトナム水上人形劇を構成する「人形/台詞(ベトナム語)」「劇場(舞台セット)」の角度から、子どもから大人まで楽しめる体験型・工作プログラムを行います。
日程:1月16日(日)11:00-14:00 <劇場編> 15:00-17:30<人形編>
会場:KICC(公益財団法人神戸国際コミュニティセンター)
参加費:無料
<劇場編>
「劇場(舞台セット)」では、水上人形劇がはじまった最古の場所と言われている“チュア・タイ”の建物を撮影した映像を、タンロン劇場が今回のプログラムの為に製作します。水上人形劇場の成り立ちを知ってから、タンロン水上人形劇場のミニチュアを参加者と共につくります。
<人形編>
「人形/台詞(ベトナム語)」では、中継でハノイにある「人形を製作する工房」と繋ぎ、実際に人形製作師が、人形に色づけをする行程を紹介します。その後、タンロン水上人形劇場の役者と一緒に台詞を話してみるワークショップを行います。
<工作編>
水上人形劇場のミニチュアをつくろう!
映像提供:タンロン水上人形劇場
講師:合田昌宏、ファン・チォン・クォン
<人形編>
人形をスケッチしよう!人形劇の台詞を話してみよう!
講師:タンロン水上劇場
2.【勉強会】
在住外国人の“文化権”について考える勉強会
日程:1月26日(水)11:00-13:00吉冨クラス/14:00-16:00中川クラス
会場:KICC(公益財団法人神戸国際コミュニティセンター)
参加費:500円(資料代として)
講師:吉富志津代(名古屋外国語大学 教授/NPO法人多言語センター FACIL 理事長)
中川幾郎(文化政策学者/帝塚山大学 名誉教授)
日本で生きる人々にとっての「文化権(=文化的に生きる権利)」について、「日本国憲法」や「文化芸術基本法」にはどのように記されているのでしょうか。その中に、在住外国人は含まれているのでしょうか。この勉強会では、在住外国人の“文化権”にフォーカスして、権利、公共の役割、制度の問題からの視点から現状や課題をあぶり出します。また在住外国人の出身文化や継承文化に接続することの必要性について捉える勉強会を行います。
3.【特別記事】
チャオチャオ!アジアの人形劇!
アジアは、音楽やお芝居などの色々な芸能の宝庫です。今回は、東南アジアにおける様々な上演形式をもつ「人形劇」にフォーカスし、福岡まどかさんにお話を伺い、インドネシアの人形劇を中心にご紹介しました。
【福岡まどか インタビュー】東南アジアの豊かな影絵・人形劇の世界
https://dancebox.studio.site/articles-details/chaochao_interview
主催:NPO法人DANCE BOX
共催:独立行政法人国際交流基金 アジアセンター
助成:神戸市 まちの再生活性化に寄与する文化芸術創造支援
協力:KICC(公益財団法人神戸国際コミュニティセンター)
映像提供・出演:タンロン水上人形劇場(ハノイ/ベトナム)
翻訳・通訳:ベトナム夢KOBE、平野優芽、近藤美佳 他
企画協力:大阪大学 外国語学部 ベトナム語専攻
コーディネーター:ファン・チォン・クォン
この記事に登場する人
タンロン水上人形劇場
1969年10月に設立。ハノイ芸術大学を卒業した9人による劇団から始まり、ほぼ半世紀にわたって活動の幅を広げて来ました。ハノイのホアンキエム湖のほとりに拠点の劇場を構え、年間を通じて上演しています。古き良き民話や伝説を復活させ、且つ、新しい演目を発信するなど、ベトナムを代表する水上人形劇の専門劇場です。(写真提供:タンロン水上人形劇場)
Nhà hát Múa rối nước Thăng Long
Nhà hát được thành lập vào tháng 10 năm 1969. bởi một đoàn nghệ thuật có 9 diễn viên tốt nghiệp từ trường Nghệ thuật Hà Nội. Trải qua nửa thế kỷ, nhà hát dần mở rộng hoạt động và ngày càng phát triển. Nhà hát nằm bên cạnh Hồ Hoàn Kiếm, Hà Nội và biểu diễn múa rối nước 365 ngày trong năm. Nhà hát Múa rối nước Thăng Long là nhà hát chuyên biểu diễn múa rối nước đại diện cho Việt Nam, là nơi làm sống lại những câu chuyện, truyền thuyết dân gian đặc sắc đồng thời cũng giới thiệu các tiết mục hiện đại.
2023年4月7日 時点
合田昌宏
神戸の大学を卒業後、地元工務店の設計部を経て、2001年に独立。自宅を古い文化住宅購入〜改装したきっかけに空き家活用や神戸の間伐材を使ったものづくりを得意とし、これまで、1000案件以上を手がける。
2023年4月7日 時点
Phan Trong Khuong
フンイェン/ベトナム出身、神戸市長田区在住。2001年ハノイ映画演劇大学卒業。国立青年劇場の所属俳優として、演劇やコメディ等の舞台に立つ。その後、同劇場の音響スタッフを18年にわたり務める。2015年、結婚を機に来日。神戸市内の様々なベトナム・コミュニティーのイベントに関わる。日越の文化交流を目指したVIANを設立し、2022年に拠点スタジオLang Toiを開設した。
2023年4月7日 時点
福岡まどか
東京芸術大学大学院音楽研究科修了、修士(音楽)。総合研究大学院大学文化科学研究科修了、博士(文学)。1988年から1990年まで文部省アジア諸国等派遣留学生としてインドネシア国立舞踊アカデミー(現インドネシア芸術大学)バンドン校に留学し、スンダ地方の舞踊を習得して以来、インドネシアを中心とする東南アジア芸能の調査、研究に従事。現在、大阪大学人間科学研究科教授。著書に『ジャワの仮面舞踊』(2002年勁草書房)、『性を超えるダンサー ディディ・ニニ・トウォ』(2014年 めこん)、『ジャワの芸能ワヤンその物語世界』(2016年スタイルノート)など。編著書『現代東南アジアにおけるラーマーヤナ演劇』(2022年3月刊行 めこん)。
2023年4月6日 時点
横堀ふみ
神戸・新長田在住。劇場Art Theater dB神戸が活動拠点。ダンス・プログラムを中心に、ほぼ全ての作品/企画を新長田での滞在制作によって実施する。同時に、世界の様々な地域をルーツとする多文化が混在する新長田にて、独自の国際プログラムを志向する。新長田アートマフィア仕掛人・構成員。日越の文化芸術交流を目指したユニット「VIAN」メンバー。京都市立芸術大学非常勤講師。
photo by Junpei Iwamoto