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【RRAレポート】桂阿子+山田カイル

劇場〈ArtTheater dB KOBE〉および新長田各所を拠点に、自身の表現探求や身体の鍛錬のためのリサーチやダンストレーニングなどを行う『dBリサーチ・レジデンス・アーティスト』。
2026年度は4月〜7月の約4か月間に14組のアーティストが滞在します。

今回は、5月21日~28日にかけて滞在した桂阿子さん+山田カイルさんの滞在記録を公開します。

 

2026年度 dBリサーチ・レジデンス・アーティスト(RRA2026)については ▶︎こちら から

桂阿子+山田カイル
【滞在期間:5月21日(木) – 5月28日(木)】

5月21日(木) 雨

・山田:朝一の飛行機で東京から神戸空港~新長田入り、桂:京都からJRで新長田入り
・桂と山田合流、ミーティング(マクドナルド新長田駅前店)
・dBに移動し昼食をとりつつ横堀さんとミーティング(劇場ロビー)
・インタビュー①:木村玲奈さん(劇場/オンライン)
・今日の状態で踊る①:玲奈さんの近作「糸口」の振付書から言葉をお借りしてインプロ
・夕食をとりながらフィードバック(みずはら)

5月22日(金) くもり/晴れ

・昼食をとりながら雑談、ミーティング(めりお~る)
・インタビュー②:岸本昌也さん(劇場)
・今日の状態で踊る②:岸本さんがレクチャーしてくださった神楽の概念的な部分を意識しながらのインプロ。避難経路誘導。
・岸本さんも交えてフィードバック(劇場ロビー)
・商店街の都そばで夕食をとり解散
・桂、京都へ一時帰宅

5月23日(土) くもり/晴れ

・松﨑桃子さんからお誘いをいただき、建築家上野さんの案内による「丸山廃墟ツアー」に参加
・新長田に戻りお弁当をテイクアウトして一時解散
・各自食事を済ませ菊水温泉に再集合。ソフトクリームを食べる。
・今日の状態で踊る③:新長田駅地下のスロープで父親に電話をかけ、今日の出来事を話す。石川朝日さんのレジデンスメンバーの加藤陽康くんが立ち会ってくれる。
・駅前広場のベンチでフィードバック

5月24日(日) 晴れ

・「やさしいコンテンポラリーダンスクラス」に参加
・桂、安住の地『かいころく』蚕種編を観劇(KIITO)
・桂と山田合流し三ノ宮駅周辺を散策。レコードイベント、生糸検査所ギャラリー、こども本の森神戸、東遊園地、慰霊と復興のモニュメント「COSMIC ELEMENTS」など。
・高架下でアメリカンスタイルのピザを食べる
・新長田に戻り、地下街で各自買い物をして解散

5月25日(月) 晴れ

・昼食をとりながら雑談、ミーティング(ラビットハウス)
・インタビュー③:横堀ふみさん(劇場の楽屋へつづく通路)
・漢字の成り立ちの勉強会「ものしり文字会」に参加(新長田合同庁舎)
・劇場に戻り松﨑桃子さんとお互いのワークのシェア
・今日の状態で踊る④:24~25日にかけての出来事(やさコンに参加したこと、様々な形で震災の痕跡に触れること、漢字の成立ちについての講座を受講して文字を書くということについて考えたこと、耳の遠いおじいさんと話したこと等)を詰め込んだインプロ。松﨑桃子さんと、たまたま劇場のロビーにいた火野7さんに立ち会ってもらう。
・舞踏WSに参加
・大谷さんのご仏壇に手を合わせに行く→酒盛り

5月26日(火) 晴れ

・朝食をとりながら雑談、ミーティング(めりお~る)
・劇場から横堀さんの案内でラントイへ。自転車で新長田のまちを走る。
・インタビュー④:大谷悠さん(ラントイ)
・今日の状態で踊る⑤:音楽に振り付ける。松﨑桃子さんに振付を共有し一緒に踊る。
・夕食をとりながら雑談、フィードバック(都邸)
・北海道から届いた立派なホワイトアスパラガスをいただく女子会に参加(house next door)
・営業終了間際の扇港湯に駆け込み、解散

5月27日(水) 雨/くもり

・劇場ロビーでミーティング
・インタビュー⑤:内田結花さん(新長田駅周辺を歩いたのち珈琲屋ほわいと)
・劇場で明日最終日に行うまとめパフォーマンスの構想について話す。dBスタッフの鈴木優さんが記録写真撮影に入ってくださる。
・劇場ロビーでフィードバック ・都邸でこれまでの映像データの共有、確認

5月28日(木) 晴れ

・横堀さんとレジデンス全体のフィードバック(劇場ロビー)
・アップ、振付の確認と修正、上演の進行打ち合わせ等まとめパフォーマンスの準備
・今日の状態で踊る⑥:レジデンスまとめパフォーマンス(劇場)
・立ち会ってくださったみなさんとフィードバック
・空地文庫で石川朝日さんのレジデンスチームの打ち上げに寄せてもらう。カレーをごちそうになる。
・桂:終電で京都へ帰る
・山田:翌朝始発で新長田を発つ

 

インタビュー①木村玲奈さん/photo by 山田カイル

 
 


 
 

Q1 レジデンスの目的を教えてください。

インストラクション(スコア/タスク)からパフォーマンス(ダンス)を立ち上げるプロセスの可能性を探りたいというようなことをこのレジデンスの応募理由に書きました。そしてその目的を達成するために活動の計画を立てていましたが、本当は何がしたいのか、この滞在で何ができるのか、何が得られるのか、自分は何を問いたいのか、はっきり思い描けないまま新長田にやってきました。というような状態であるということを初日にカイルさんに伝えたら、じゃあ問いを探すことが目的でいいんじゃないか、と言われてあぁなるほどそうかとなり、ひとまずその日その時点の自分の身体を踊らせるためにはどのような条件や振付が必要なのかを考えてやってみた身体の実感に集中することにしました。同時に、なぜダンスなのか、なぜダンスに拘って生きてきたのか、生きていこうとしているのかというような大きな問いも常に浮かべていました。(桂)

テクスト/インストラクションをはじめ、外的な介入に基づいて踊りを立ち上げるとき、そこで何が起こっているかについて考える。僕にとっては、桂阿子というダンサーが、自身にとっての説得力を損なわずに舞台に立つことのできるあり方を探すサポートをしつつ、自分がドラマトゥルクとしてダンサーと協働する方法を改めて考える機会として臨みました。(山田)

 

 

Q2 どのようなリサーチや実験を行いましたか?

「インストラクション」を起点のテーマとして、様々な人にインタビューを実施。身体の外的な要因との関係性のなかでダンスが立ち上がっていくときに、何が起こっているのか/そうした外的な因子との関係のなかで踊るとはどういうことなのか、について考えた。また、各日そのインタビューを元に、桂阿子が「その日の状態で踊る」ことの定点観測を行った。最終日には総括として、今回のレジデンスで経たインプットを元に短い「まとめパフォーマンス」を実施。

木村玲奈さんには、インストラクションとダンスを並行して作るプロセスについて聞いた。岸本さんには、幼少期から取り組んできた神楽の世界観が、いま現代演劇のパフォーマーとして活動することにどのような影響があるか、芸能と現代アートの接続について聞いた。横堀ふみさんには、横堀さんがdBに関わることになった歩みと、近年dBが幅広く取り組んでいるコミュニティとのプログラムについて。振付家の大谷悠さんには、トリシャ・ブラウンに受けてきた影響や、幾何学的なダンスが持つ可能性。ひいては、大谷さんがダンスに見出すことについて。内田結花さんには、新長田の町を始めとして「リサーチ」から様々なアウトプットを作っていくプロセスについて聞いた。
 

インタビュー④大谷悠さん(ラントイ)/Photo by 山田カイル

 
 
Q3 印象的な瞬間(エピソード)があれば教えてください

劇場の近くで石を探しており、広場のベンチに腰かけていたおじいさんに石が拾えそうな場所をお聞きしようとしたところかなり耳が遠い様子で、やり取りをするために大きな声を出す必要がありました。5分ほど、非常に大きな声を出し続けて会話をしました。これまで大きな声や通る声を出すのに苦手意識がありましたが、その時なんだか喉が開いたような感じがして、その新鮮な身体の感覚をもう一度試してみたいと思ったとき、劇場の中であれば気兼ねなく大声が出せるではないか!今日やってみよう。となりました。自分の身体に無意識に存在していた日常と非日常の境界が揺らいだ瞬間だったかもしれません。そして劇場を拠点にした滞在制作とはこういうことか!と合点しました。(桂)

大谷さんとのインタビュー後の「今日の状態で踊る」。その日まではソロで踊っていたが、この日は劇場をシェアしていた松﨑桃子さんに、桂が作った振付を覚えてもらい、デュオで踊った。今回に至るなかで阿子さんが抱えていた違和感・葛藤を考えるうえで、「どのような振付なら他のダンサーに渡せるか」を考えるのは非常に有効だと感じ、レジデンスにとって一つのハイライトとなった瞬間だったと思う。振付自体も良かったし、松﨑さんと阿子さんの身体にもシナジーがあると思った。(山田)

 

 

Q4 今回のリサーチで収穫はありましたか?

私の場合、創作の出発点として極私的な経験や身体の実感があるのですが、それをより広い文脈で通用する言葉にしたり、抽象度の高い概念に置き換えるということがなかなかできません。むしろそれをしようとすると“今”を捉えようとする身体の思考が途切れてしまうような気がして意図的に放念することがよくあります。その点今回はドラマトゥルクという客観的で言語能力に長けた存在が並走してくれていたので安心してマイペースに内観に集中することができました。カイルさんだけでなく、インタビューを通してお話をうかがった方や、同時期に滞在していたアーティストのみなさん、新長田や神戸のまちの方々など異なる背景や視点、語彙をもつ他者と関わったり、協働するなかで自身の小さな振る舞いが意味を持ち、一人の身体ではたどり着くことができない場所や景色をみることができる。そういった様々な外との関係性によって自己を理解することや自己の拡張が可能なのだと実感しました。(桂)

今回色々なインプットを経たことで、桂阿子というダンスアーティストの新たな語彙が形成され始めたと思う。自分にとっては、ドラマトゥルクとしてダンサーに介入する新しい方法を実感することができた。これまでドラマトゥルクとして協働してきたアーティストは皆、純粋にフィジカルな方法というよりは、何かしら劇的な仕掛けを導入するタイプが多く、演劇作家である自分と思考が重なる部分がある故に、介入の仕方が難しかった。阿子さんは至極「ダンサー」であるので、かえってフラットに身体に関する提案ができるし(有効でないものはすぐにそう判断してくれるので)、外枠の仕掛けに関しても有効な提案ができると感じた。(山田)

 

 

Q5 今後の展望を教えてください

今回のレジデンスではこれまでのダンス経験を軸に自身の過去を振り返る瞬間が多くあり、結果として今、何を手放して何を大切にしたいのか、自身の現在地を確認することができました。次は、他者(観客)とどのように関わることができるかを考えていくために、作品としてフィクションをつくることにトライしたいと思っています。(桂)

今後も、今回のレジデンスを端緒とした阿子さんの創作に並走する。自分は、キャリアの始めがダンスカンパニーであったのに、色々な事情でダンスから離れてしまった。しかし、身体への問いは自身の創作全般にとって非常に重要なので、阿子さんとの協働を通して、自身のドラマトゥルクとしての方法論を広げながら、ダンスという領域との繋がりを作り直していきたいと思っています。また、今、ジュネスホワイトの二人とは別々にプロジェクトを動かしている状態なので、どこかで合流できたら面白いなと思っています。(山田)
 

まとめパフォーマンス/Photo by 山田カイル
 
 


 
 
今回のリサーチに関わった人や場所

木村玲奈(ダンサー/振付家)
岸本昌也(俳優/パフォーマー/グラフィックデザイナー)
横堀ふみ(NPO法人DANCE BOX 共同代表)
大谷悠(ダンサー/振付家)
内田結花(振付家・ダンサー)
上野天陽(建築家、まちづくりコンサルタント)
松﨑桃子(振付家・ダンサー)
福永将也(ダンサー・振付家)
火野7(ダンサー/振付家)
石川朝日(俳優)/および石川朝日リサーチレジデンス参加者の皆さん
小松菜々子(ダンサー・振付家)
福井智子(デザイナー)
野田容瑛

ラントイ
長田区丸山エリアの廃墟群

この記事に登場する人

©️わびすけ

桂 阿子

大学在学中にコミュニティダンスと出会い、ダンスの創作現場にある支配/被支配の構造を意識するようになる。その後ソマティックな身体観を手掛かりに踊る身体の探求を続ける。2018年より野田容瑛とアーティスト・デュオ「ジュネスホワイト」を結成し、私的な営みをアーカイブしながら時間や空間の共有可能性の拡張を試みている。現在は大学院に在籍し、衣服(衣装)と身体(ダンス)の関係性を問いながらコンテンポラリーダンス作品の創作プロセスの分析にも取り組む。NPO法人DANCE BOX国内ダンス留学@神戸4期ダンサーコース修了。

2026年6月17日 時点

上竹真菜美

山田カイル

演劇作家、ドラマトゥルク、翻訳家。抗原劇場代表。1993年テキサスに生まれ、その後青森で育つ。演劇というメディアの仮設性に着目し、「舞台芸術」の枠組みの内外を行き来しながら、不変とされる概念を解きほぐす作品を展開している。過去作に、1人でパフォーマンスを立ち上げるためのインストラクション『1(忘)LDK』や、観客が自ら選んだ本を暗記するアートプロジェクト『華氏同盟』など。ジュネスホワイトや木村玲奈など、ダンサーとの協働も多数。2026年より、SPAC「BIOTOPEー劇作家のためのキャンプ」に参加。

2026年3月31日 時点

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