【RRAレポート】髙山玲子
劇場〈ArtTheater dB KOBE〉および新長田各所を拠点に、自身の表現探求や身体の鍛錬のためのリサーチやダンストレーニングなどを行う『dBリサーチ・レジデンス・アーティスト』。
2026年度は4月〜7月の約4か月間に14組のアーティストが滞在します。
今回は、6月24日〜30日にかけて滞在した髙山玲子さんの滞在記録を公開します。
2026年度 dBリサーチ・レジデンス・アーティスト(RRA2026)については ▶︎こちら から
髙山玲子
【滞在期間:6月24日(水)〜30日(月)】
6月24日(水) 小雨のち雨
○ 夕方、新長田に到着。内田さんとミーティング後、鈴木さんと宿泊施設へ。
○ 夜、ベトナム料理店『四姉妹』で「ベトナム南部フティウ」とビール。
○ 夜、『扇港湯』へ。サウナが30円、マッサージ機が20円!
○ 深夜、同じくRRAで滞在しているダンサーの天野朝陽さん、杉浦ゆらさんから新長田のおすすめスポットを教えてもらう。
6月25日(木) 雨のち大雨
○ 昼、珈琲屋 『ほわいと』でミニタマゴサンド+コーヒーのセット。
○ 午後、下村さんから劇場についての説明を受ける。内田さんから『ArtTheater dB』のこれまでの歩みについてなど伺う。
○ 夕方、『シェフデリ』でバインミーを食べる。ロピアで買い物。
○ 夜、ベトナム仏教寺院『和楽寺』まで歩くも、この日は閉まっていた。
○ 夜、中国家庭料理『めいりん』で水餃子、えびたまご、ビール。
○ 夜、『扇港湯』へ。
6月26日(金) 小雨のち大雨
○ 昼、再び『四姉妹』で「牛肉のフォー」。同席になったベトナム人女性とたくさん話す。
○ 午後、真陽小学校で「ホアマイ教室」を見学。
○ 夕方、『ラントイ』でヒュウくんに話を聞く。8月に行われる「ベトナム水上人形劇」のミーティングなど。
○ 夜、居酒屋でご飯会。唐揚げ、ポテト、牛肉炒め、トマトチーズなど、なにを食べてもおいしい。
○ 夜、『扇港湯』へ。
6月27日(土) 雨のち晴れ
○ 昼・午後、少し調子が悪いので寝ている。
○ 夕方、再度『和楽寺』へ、たくさんの人が集まっていた。
○ 夜、『扇港湯』へ。
○ 深夜、同じ期間滞在しているダンサーのバネッサさんと話す。
6月28日(日) 晴れ
○ 昼、「水性演劇部」<遠征>ワークショップ in 神戸ダンスボックス 開催。
○ 夜、参加者の方々と『壱番』で焼肉、2軒目は外で飲める店へ。
○ 夜、『扇港湯』へ。ついに常連の方から「こんばんは」と声をかけてもらった。
○ 深夜、眠れない。
6月29日(月) 晴れ
○ 早朝、長田神社まで歩く。
○ 昼、少し眠る。
○ 夕方、dBのラウンジにて、2000年に開催した全5回のオンライン座談会『制作における協働について考える会』の「第5回 ふみ&潤のおしゃべりナイト」を再視聴。 (※詳細リンク:https://x.gd/babMU)
○ 夜、『はっぴーの家ろっけん』を見学。
○ 夜、韓国居酒屋『みっちゃん』でムシ豚、チャプチェ、ビール。
○ 夜、『菊水温泉』へ。
6月30日(火) 曇り
○ 午前、dBで中間アヤカさん講師による「大人からはじめるバレエクラス」に参加。笑っちゃうほどできなかったけど、とてもいい時間だった。
○ 昼、『サイゴンチュンハイ』で「揚げ春巻きの混ぜそば」。バネッサさんも合流。
○ 午後、内田さんとレジデンスのフィードバック。
○ 午後、帰京。

「和楽寺」で頂いたヴィーガンのブンボーフエ。上の具は湯葉と大豆ミートの椎茸ハム
Q1 レジデンスの目的を教えてください。
1. 新長田に住むベトナムにルーツを持つ人たちの話を聞くこと
2. 東京で毎月開催している「水性演劇部」のワークショップを神戸DANCE BOXで開催すること
Q2 どのようなリサーチや実験を行いましたか?
1. ベトナムにルーツを持つ人たちのリサーチについて
・ホアマイ教室
真陽小学校で行われている、ベトナムにルーツを持つ子どもたちの母語教室、低学年クラスと高学年クラスを見学させてもらいました。終わったあと、指導をされていた近藤美佳先生とお話をしました。
・和楽寺(ベトナム人仏教寺院)
住職の釈徳智さんに連絡をとって夕方訪れました。たくさんのベトナム人の方が集まっており、どうぞどうぞと一緒に食事をいただき、読経に参加し、6月生まれの方の合同誕生日会に混ぜてもらいました。そこで年配の男性、翁さんから、日本に辿り着いてからこれまでの経緯、和楽寺建立時のことなど、たくさんお話を聞くことができました。
・新長田のベトナム料理
滞在中はベトナム料理をたくさん食べました。ベトナム料理店『四姉妹』では、これまで若干苦手だった内臓がたっぷり入ったスープ麺「フティウ」にチャレンジしてみましたが、くさみもなく柔らかくてとても美味しかったです。また相席になったベトナム人女性の方とたくさんお話をしました。
・交流スペース「ラントイ」
クォンさんと横堀さんが運営されている交流スペースで、ベトナム人のご両親を持つヒュウくんのお話を聞かせてもらいました。
2.「水性演劇部」ワークショップ in 神戸DANCE BOXについて
HPやSNSで参加者を募ったのですがなかなか人が集まらず、東京と関西の違いなのか、知名度の問題か、いろいろと考えさせられました。
当日はありがたいことに多くの方にお集まりいただき(7割がDANCE BOXのスタッフさんとそのご家族でした…)、温かい雰囲気に包まれながら無事終えることができました。
今回の大きな課題は、普段開催している中野の「水性」(フラットなフリースペース)とは違い、劇場という「舞台」があることと、参加者同士の「距離感」でした。「水性」は、小さな声で話しても聞こえるコンパクトな空間なので、親密度とグルーブが生まれやすい場所です。そこで今回は、もし声が聞こえなかったら「そっと聞こえるところまで近寄ってもらう」ことにしました。また、舞台は最初から使わずに、基本は客席側のスペースを使用し、次に舞台の側面、そして最後に舞台の中心へと、徐々に場を慣らしていくことに。こうして認知する空間を少しずつ広げていきました。
いつもならもう少し、全部のエピソードがまとまるように構成を考えながら作るのですが、今回はそこまで頭が回らず、ざっくりとした『上演』になりました。それでも、参加してくださった方たちから「おもしろかった」と言ってくださったので、初<遠征>はひとまず成功だったのではないかと思います。
DANCE BOXのみなさんの新長田の長屋そのもののような、おおらかで垣根のない優しさに心から感謝します。

ワークショップ、シーンの創作中
Q3 印象的な瞬間(エピソード)があれば教えてください
『ラントイ』での集まりのあと、近くの居酒屋へ移動してみんなでご飯を食べました。
ヒュウくん、クォンさん、横堀さん、同じくRRAレジデンスのバネッサさん、わたし。外は大きな台風が近づいていて、雨が強く降ったり止んだりを繰り返していました。ヒュウくんが突然「みんなの夢を教えてください」といいだして、一人ずつ自分の夢を発表することになりました。みんなの夢、それが努力すればなんとかなるものなのか、どうなのか、分からないでいると「夢だから、夢だからね」とヒュウくんが笑い混じりに言ったのが印象的でした。みんなの夢がいつか叶う日のことをぼんやり考えました。
Q4 今回のリサーチで収穫はありましたか?
「ベトナムコミュニティ」に対して、行く前は複雑そうだな、踏み込んでいけるだろかと、いろいろ考えていたのですが。新長田の場所柄かもしれませんが、どなたも話しかけると笑顔でたくさん話してくださる方ばかりで、「ベトナム人はおしゃべり好き」という一面を肌で感じることができました。
話を聞くと、本当に一人ひとり境遇が違いました。特に感じたのは世代間でのギャップです。ベトナムから日本に辿り着いて、生きていくために必死で働いてきた年代の方々と、日本で生まれ育った若い世代とでは温度差がありました。二つの国のナショナリズムという見えない大きな壁の板挟みになって成長していくのは容易なことではなく、そういった子どもたちを支えようと『ホアマイ教室』や交流スペース『ラントイ』という場所を運営されている方々の仕事・活動を知れたことは大きな収穫でした。
Q5 今後の展望を教えてください
今後は、引き続きベトナムにルーツを持つ方への聞き取り(リサーチ)を継続し、いずれはベトナム本国へもリサーチに行きたいと考えています。そこから、まだどのような形になるかは分かりませんが、何かしらの作品として発表することを目標にしています。
主催する「水性演劇部」は、ようやく冊子を作って周知活動を始めたところです。初の<遠征>を神戸DANCE BOXで開催できたことは、大変嬉しい出来事でした。ここからはアウトリーチ活動を含め、さまざまな場所で、多様な人たちと「水性演劇部」の手法を用いた創作上演を行っていきたいと思っています。
【今後の予定】
「水性演劇部」は毎月1回、中野にあるスペース「水性」で開催しています。
https://www.takayamareiko.com/suiengekibu

ワークショップ、シーンの創作中
今回のリサーチに関わった人や場所
近藤美佳(大阪大学准教授 / 「ホアマイ教室」真陽小学校 ベトナム語講師)
トラン・フィー・ヒュウ(子どもの水上人形劇プログラム担任 / ベトナム夢KOBE 母語教室講師 )
横堀ふみ(NPO法人DANCE BOX 共同代表 / 「ラントイ」運営)
ファン・チョン・クォン(「ラントイ」運営)
釈徳智(「和楽寺」住職)
翁(「和楽寺」で出会った年配の男性)
フォン(「和楽寺」で出会った女性)
「四姉妹」で相席したベトナム人女性
真陽小学校
ホアマイ教室
和楽寺
ラントイ
はっぴーの家ろっけん
この記事に登場する人
髙山玲子
アーティスト・俳優
京都府出身。俳優として多くの作品に出演するのと並行して、自身や他者の経験・記憶を媒体としたオリジナル作品の演出・創作を行う。ミュージシャン、写真家、エンジニア、デザイナーなど、異業種の表現者との協働も多く、既存の演劇の枠組みを解体・再構築する実験的なパフォーマンスを展開。観客、作品、作家のつながりを見つめ直し、相互作用を刺激することで「今、ここで起きていること」を他者と共有する方法論を多角的に模索し続けている。
2026年3月31日 時点


