【RRAレポート】村津すみれ
劇場〈ArtTheater dB KOBE〉および新長田各所を拠点に、自身の表現探求や身体の鍛錬のためのリサーチやダンストレーニングなどを行う『dBリサーチ・レジデンス・アーティスト』。
2026年度は4月〜7月の約4か月間に14組のアーティストが滞在します。
今回は、7月13日 〜 7月22日にかけて滞在した村津すみれさんの滞在記録を公開します。
2026年度 dBリサーチ・レジデンス・アーティスト(RRA2026)については ▶︎こちら から
村津すみれ
【滞在期間:7月13日(月)〜22日(水)】
7月13日 (月) DAY 1
大きなリュックを背負うと安心する。しっかり立ってる気持ちになれる。
dB に到着。
説明を受ける。
書類と硬めの言葉たち。少し体がこわばっている。また、ちゃんとしてしまった。
メンバーのホリは、ちゃんとしないで、順調に鎧を無効化してる。少し羨む。
メンバーのコザさん合流。
3人揃うと、少しえぐみが出ていい感じ。
劇場に入って喋る。
直線。白い光。ツルツルの黒い床。ここでは、きっぱりとなる。
お昼、外に出てすじ焼きを食べる。コザさんがタバコを吸おうとしてライターがないことに気づいている。悲しそうで私が悲しい。台湾ドーナツ食べることにする。
リサーチ内容の打ち合わせ。
見えていないことを見えているように話すことが必要だったりする。むずかしい、まだ慣れない。
夕食は洋食プーさん。
ハンバーグにコロッケに、エビフライも!
帰りにスーパーで、大好きな黒糖フークレエを買って、愛でる。
7月14日 (火) DAY 2
星座という名の喫茶店でモーニング。
失恋を華やかに歌い上げる音楽。お客さんは皆慣れた様子で、いつもの注文をする。
店の人、リズムに乱れがない、刀の師みたい。
それから、即興歩き。
見えたものとか、聞こえた音とか、認知した情報を即時に口に出しながら商店街を歩く。
いま に居続ける試み。
誰かと一緒に いま にいると、可笑しくて嬉しくて、たくさん笑ってしまう。
いま。。。
はじめましてでは繋がれるのに、どうして何度も会ううちに、離れていってしまうんだろう。
いまじゃないものたち。記憶。想定。期待。
それらがベタベタ付着して、肥大化して、身動きを封じてく。一緒にいるのに、一緒にいない。
ずっとはじめましてだったらいいのに、と書いた。
ちいさな公園に行き着く。
パンダとコアラのぐらぐら遊具。半分夢みたいになる。
スッカラチョッカラで韓国料理を食べる。絶品。
dB にもどる。
即興歩きを劇場でもやってみる。外と比べて変化が見えずらい空間なので、人の動きに意識のピントが合う。向かい合うと、からだのラップバトルみたいになった。
ホリと電車に乗って、加古川に向かう。
祖母に会いに行く。
図書館でしばらくぼーっとする。
まるアイで、墓花と5割引のお寿司を買って、祖父母がむかし暮らしていた家に向かう。
畑にお隣の橋本さんがいた。 昔の私をよく知っている人。
知らなかった私の家族の話を聞かせてもらう。
祖父のお墓参りに行く。
ホリと喋る。(ドムサブの話をたくさんした、なぜだっけ)
帰宅。

新長田 街のリサーチ
7月15日 (水) DAY 3
喫茶店ギャザァーで、モーニング。
ちょうどいい卵。ちょうどいいコーヒー。フカフカのサンド。
午前、いっぱい話す。
散らばったものを結びあわせる時間。
dB に向かう。
反応するからだ、のワーク。ホリがアクセスできた。そこに現実のからだで交わってみたりする。
夕方からはバイソン。
7月16日 (木) DAY 4
dB 稽古。
落っこちないからだ、のワーク。
新長田の就労継続支援 B 型事務所 WAGOMU さん訪問。
よくみて、よくきいてくれる。いいねって言ってくれる。だから、私これがすき、をいうのが怖くない。
ロイヤルインドネパールレストラン。
カレーを食べる。ナンおかわりしちゃった。
すこし眠る。
夕日がこわい日。
海岸線。駅なのに、息が詰まらない。
くねくねの天井。水色のタイル。お魚の絵。風。
急に具合が悪くなる、鑑賞。
帰宅。
コザさんと深夜電話。
これまでのことを共有する。

就労継続支援 B 型事務所 WAGOMU 訪問
7月17日 (金) DAY 5
新長田の高齢者デイサービス訪問。
dBのダンサーさんによるエクササイズ教室。
振付が高難易度でびっくり。めっちゃ踊ってた、100歳の方も。
あらゆる記憶が詰まった身体たち、きれい。
しんちゃん食堂。
小さなカウンターでだし巻き定食。うまー!
八百屋さんで桃買った ♪
はっぴーの家ろっけんさん、訪問。
感じていることの表出が、とてもカラフル。
からだに触れる人。ジェスチャーを用いる人。言葉を介する人。目に宿す人。
ここに住んでいる人は、お互いそれをよくわかりあっていて、人に合わせて受け取り方を変えているよう。
聞かれると存在できる、がここにもある。
ケアする/ されるが一方通行でなくて、誰もがもたれあっているように見える。
銭湯行った。
夜はチェーン店でとんかつ。
帰宅。
7月18日 (土) DAY 6
喫茶ロス モーニング。
いいところ。至極のバナナジュース。
名倉市場で、コザさんの縛りのパフォーマンス観る。
7月19日 (日) DAY 7
喫茶コトブキ モーニング。
泣きたいくらい完璧な喫茶店。
店を出る最後の瞬間まで、ありがとー!と言ってくれる。
ひとりになって、WAGOMU クライビングジムに行く。1Lくらいあるコーヒーをもらう。頭ピッキーン。これまでに集まってきたこと、整理する。
7月20日 (月) DAY 8
コザさん合流
稽古
昼 松屋
稽古
夕 喫茶 珊瑚
夜 スーパー(半額のお寿司とすっぱムーチョ)
パソコン作業
7月21日 (火) DAY 9
dB のショーイング前日。
朝から稽古をしていたけれど、なんとなく心がザワザワしていて、正しくないところにいるようだった。
午前中はコザさんの幽体運動ワークと、ホリの触れるワークを教えてもらった。
小さな子が、横たわるホリのところにお野菜のぬいぐるみを腕いっぱいに抱えて、お腹にボトんと落とし、ホイッとまたいで、腕を小さな手でこしょこしょして、くふふ、と笑う。手首のところにお尻をつけて、うんち!という。パァーとかけていく。
コトブキという完璧な喫茶店に再度行く、かき氷を頼もうとしたけれどミルクコーヒーにする。
コザさんの昔の話を聞く。話を聞くのは、小さな宇宙を顕微鏡で覗くみたい、ボヤキがすこし晴れる。
私のわがままに付き合って、ホリとコザさんは車で私を加古川まで連れてきてくれた。
ひとりで、祖母に会いにいく。
帰宅。
海辺で喋る。
7月22日 (水) DAY 10
最終日。
ワークインプログレスのショーイング。
来てくれた方たちと、フィードバックセッション。
帰宅。

劇場での実験
Q1 レジデンスの目的を教えてください。
最終日のメモには、
限りなく夢に近いからだをもつ祖母。
現実のからだでもって、どうそれと出逢える?
と、ありました。
Q2 どのようなリサーチや実験を行いましたか?
ひとつは、加古川にいる祖母を訪ねました。認知症をもつ彼女の世界の経験のしかたを想像すること、症状として名付けられた振る舞いを身体性を伴った有機的な言語に翻訳すること、を試みました。
もうひとつは、新長田にある就労継続支援 B 型事務所 WAGOMUさん、はっぴーの家ろっけんさん、高齢者デイサービスのエクササイズ教室に伺いました。訪問、見学、インタビューをさせていただきました。
Q3 今回のリサーチで収穫はありましたか?
新長田では、「その人がその人としていられる」を作っている人にたくさん出会いました。人には独自の表出があることが当たり前のように周知されていて、名をもたない言語たちが、相互に見られ、聞かれ、信じられている。指先のこわばりひとつも、聞かれたら、言語になるのですね。 それから、即興的な軽やかさもよくよく目にしました。形態化された後(規則に従って)ではなく、常に発生過程のなかにあるので、行為に実感が伴う。ここにいると、身体がほどかれていくのがわかります。
Q4 今後の展望を教えてください
こうしてレポートを書きながら、記憶のなかで確かな事実とつくりあげた物語を切り分ける難しさを感じています。想起というのはカオスを (適切に) 手元に獲得するための編集と物語化だって、メンバーが言いました。そこには私たち各々の手ぐせやら防衛やら願望やらがはいりこむ。私たち、同じところにいたはずなのに、1秒後にはすでに分離を始めている。それがいつも悲しいです。
認知症をもつ祖母とのコミュニケーションは、常に、いま、です。
覚えてなくても、覚えてないから、確かに、繋がっている。そこに憧れのようなものがありました。
こうして、見て、解釈することは、それ自体わたしの物語に回収してしまっているのかもしれない。けれど逢える気がして、見ていたい、と思ってしまいます。

真陽地区 高齢者デイサービス訪問
今回のリサーチに関わった人や場所
堀越理子さん(共同リサーチ/ 創作)
神﨑雄大さん(共同リサーチ/ 創作)
村津多恵子さん (すみれ祖母)
就労継続支援 B 型事務所 WAGOMU さん
森幹雄さん(DJ ・オーガナイザー)
WAGOMU スタッフ、利用者の皆さん
はっぴーの家ろっけん さん
真陽地区 高齢者デイサービスの皆さん
福島頌子さん(ダンサー、振付家)
NPO法人 DANCE BOX スタッフの皆さん


