【RRAレポート】木原萌花
劇場〈ArtTheater dB KOBE〉および新長田各所を拠点に、自身の表現探求や身体の鍛錬のためのリサーチやダンストレーニングなどを行う『dBリサーチ・レジデンス・アーティスト』。
2026年度は4月〜7月の約4か月間に14組のアーティストが滞在します。
今回は、7月22日〜7月31日にかけて滞在した木原萌花さんの滞在記録を公開します。
2026年度 dBリサーチ・レジデンス・アーティスト(RRA2026)については ▶︎こちら から
木原萌花
【滞在期間:7月22日(水)〜31日(金)】
7月22日(水)
新長田到着
/劇場にて自主稽古・リサーチ
/RRA村津さんチームによるショーイングを見学
7月23日(木)
朝散歩(ラビットハウス〜須磨)
/RRA長尾さんチームの報告会に参加
/劇場にて自主稽古・リサーチ
/菊水温泉、「めいりん」で夕食
7月24日(金)
朝散歩(駒ヶ林の路地)
/真野デイサービス見学
/劇場にて自主稽古・リサーチ
/萬歳湯
7月25日(土)
朝散歩(マルゴ市場、塩屋)
25日(土)夕方〜26日(日)
一度東京へ
7月27日(月)
日々稽古(参加:内田結花さん)
/劇場にて自主稽古・リサーチ
7月28日(火) 12-18
朝散歩(喫茶コトブキ)
/MiMiBiの稽古を見学
/日々稽古(参加:水木ゆうなさん)
/劇場にて自主稽古・リサーチ
7月29日(水)
日々稽古(参加:扶蘇未由名さん、よねつさやさん)
/劇場にて自主稽古・リサーチ
/夜散歩(板宿方面)
7月30日(木)
劇場にて自主稽古・リサーチ
7月31日(金)
真野デイサービスにてお母さんたちと体操
/レジデンス報告会
/フィードバック
/新長田を出発

「日々稽古@兵庫」の様子 撮影:鈴木優さん
Q1 レジデンスの目的を教えてください。
・身体トレーニング・ムーブメントリサーチの実施と共有
・2023年〜2026年に実施したソロ作品「タコダンス」、場所から想起するパフォーマンス「Circo de NEMO」等の制作活動について振り返り、課題と今後の展開について考えること。
・新長田の町と劇場を行き来しながら、その体験に結びついたソロのマテリアルを試作する。
Q2 どのようなリサーチや実験を行いましたか?
・自主稽古による基礎トレーニングの見直し
・稽古会「日々稽古@兵庫」を行い、計4名のダンサー・俳優と基礎トレーニングを共有
・新長田周辺を散歩し、奥行きや距離感を感じられる風景の写真を撮影。対象物との距離による(例:遠くに見える山にだんだん近づいていった時)見え方の変化、感覚の変化をリサーチした。
・町の飲食店や銭湯で出会った住民の方との会話を通し、知らない人と接触し、交流する際の自身の振る舞いや感じ方について書き留めたり振り返った。
・報告会にて、20分程度のマテリアルのショーイングと、上記リサーチを経ての気づきをシェアした。
Q3 印象的な瞬間(エピソード)があれば教えてください
滞在中は基本的に猛暑でしたが、新長田に到着した時に感じた風が印象的でした。山と海の間を吹き抜けるような。歩いていると大体は道の向こうに山が見えて、自分が踏んでいる地面が東京にいる時より直接感じられる気がしていました。
また、お風呂屋さんの水の質が柔らかく且つさっぱりしているのに驚きでした。町のおばあちゃん達の肌の綺麗さや性格はここ(水)からきているんだ!と勝手に思うなどしました。
ダンスカンパニーMiMiBiの稽古見学中、聾者のダンサーに対して通訳者が注意を引こうと拳でドン、と床を叩いた瞬間。なるほど、振動は伝わるということか!と、自分が普段見えていない世界があることを改めて認識しました。
歩いていて、昔ながらの木造住宅が並ぶ路地から一歩抜けると、ドーンと大きな今風のマンションが聳えていました。町中に、神社、巨大な高速道路、道の角の小さな祠、チェーンのファーストフード店、国際色豊かな飲食店・・・新旧も生い立ちも景観も、複雑に隣り合っているのを見る時、こういうふうに整理ができないのが町であり社会なのか、と肌で感じました。
他にもたくさん、記憶に残る瞬間がありました。

新長田の町を歩いて、奥行きを感じられる風景を集めました
Q4 今回のリサーチで収穫はありましたか?
たくさんの収穫がありました。
第一に、等身大の、今の自分の心と体を正直に見つめ直せたことが貴重だったと思います。採択していただく企画などに合わせて何かしらの結果を整えることに必死になってしまうことも多かったのですが、今回は表面上の結果にこだわりすぎず、自分にとって必要な時間を過ごすことができました。
そのことによって、色々な土地で踊る機会をいただいてきた自分の今までの経験の中で、知らない土地で出会う人々と、ダンサーとして、また一人の人間としてどう関われば良いのか、ずっと疑問や課題を抱いていたことに気がつきました。
自分の踊りのテーマもそこから発生していると思ったので、「移動」「距離」「奥行き」といった事柄について、地図上での距離、歩いて移動している時の景色、見ている物体と自分との近さ・遠さ、初めて出会う人との距離、自分の体の中の奥行き・・・など複数の方向から考えリサーチを行いました。
一人でのリサーチ稽古の他、稽古会の開催、地域のデイサービスへの参加、他のRRAアーティストとの会話など、劇場の内外で多くの人々と交流しました。ダンスの振付や作品として形になるもの以前に、色々な立場の人と一緒にいる場で自分がどのように居られるか、何を伝えたいと思うのか、に多くのヒントがありました。
直近3年間は、ソロ作品制作などを通して”自分の”踊りとは何かを考え続けていた期間でした。今回の神戸でのレジデンスを経て、一旦その期間を整理し、区切りをつけられたような気がしています。
Q5 今後の展望を教えてください
ソロでの制作・出演活動に並行して、共に作品を作る仲間を気長に探していけたらと思っています。常に活動を共にするというよりは、メンバーが流動的であっても、日々の稽古や今考えていることを話し合う時間などを持てる緩やかな場を継続し、その中で制作できるような土台づくりを行いたいです。
dbスタッフの田中さんから報告会の際に、「人の時間を奪うことを恐れないで・・(途中経過をいろんな人とシェアした方が絶対に良い)」というアドバイスをいただきました。稽古やイベントなど色々な企画形態の中で、効率だけを求めない、お互いに持つものを共有できるような時間と場づくりを行うことを目標に活動を続けます。
【今後の予定】
2026年9月12日
青山星灯篭にてパフォーマンス「星への祈り」
2027年2月23日-24日
Curious Chamber Players(在スウェーデン現代音楽アンサンブル)招聘公演 都内実施予定

レジデンス報告会の様子
今回のリサーチに関わった人や場所
日々稽古(稽古会)に参加してくださった方々:
内田結花さん、水木ゆうなさん、扶蘇未由名さん、よねつさやさん
この記事に登場する人
木原萌花
ダンサー・振付者。
2024年、作曲家/宗像礼、制作/村松里実と共にパフォーマンスコレクティブNEMOを始動。「場所」が人の身体や心を動かす力をもつと捉え、上演空間と周囲の町のリサーチをもとに振付・演出を立ち上げる。これまでに都内各地や静岡県清水市などで上演。2025年夏には欧州ツアーを行い好評を得た。
国内外バレエ団を経て、青木尚哉、山崎広太、平原慎太郎、西島数博、広崎うらんなどの作品に出演している。
2026年3月31日 時点


