(横堀)
ドラム奏者であり「ドラびでお」の【一楽儀光】さんを、今公演のパートナーに選んだことについて教えて下さい。


(北村)
2004年秋ぐらいから、音楽家の方と作品をつくる機会を持つようになりました。既成の音楽の楽しさはありますが、生の音は、人との会話と同じで、一瞬一瞬違います。次に何が来るのか分からない音との関係の中で身体の反応がどうなるか、そしてどう踊るのかをみてみたいですね。そこにはダンスの面白さがいっぱい詰っているのではないかと。今年の秋に音楽家のイージマンと二人ミュージカルに取り組んでいた時に(2005年1月「虹のうた」@cocoroom)、大阪BABAの話がきました。そこで、今までのソロをメドレーでやってみようと思い、今までやって来た価値観をどうひっくり返していくかを考えました。ただリミックスするのではなく、何が来るのか分からない音の中で、踊りなれてきた自分の踊り、自分の作った踊りに惚れ直す、恋焦がれてみたいなぁと。ドラム奏者を選んだことは、まず楽器から入りました。今年の秋に一楽さんのドラびでおを見る機会がありまして、それが強烈に残っていました。どうせやるなら一番強烈なものとやってみたいと思い、一楽さんにアタックしてみました。


(横堀)
今までのメドレーの出発点はどこから来たのですか?


(北村)
私自身、ソロで活動し始めてから丸5年になりました。
「i.d.」(ソロ第1作目)の30回公演を達成したのが、5年前の2001年1月8日。自分として、とにかく数を打つところから始まった5年間が、自分の身体をどのように作ってきたのかを洗い直してみたいと思いました。


(横堀)
現在はそのメドレーを制作中なわけですが、いまの感触はどんな感じでしょうか?


(北村)
もう一回自分の作った踊りに習っていますね。 再演を繰り返している作品ばかりなので、あまり古い感覚がありません。 もともと作った時の感覚に学んでいますね。今までソロを作る時に、アシスタントに振付けをしながら作品を作っていきました。今はアシスタントがその時の感覚を教えてくれていますね。作ったときの私が確かにそこに在る。ソロを作っているけど一人の作業ではないです。出来上がった作品のプロセスの、短くはあるけど歴史ですね、自分の踊りを学び直す、そんな感じです。今までのシーンはたくさん出てきますが、なんでこれを作ったのか、動機のところに立ってみる。そして音が変わるので、動きがクリアになっていくのではと思っています。自分の振付を使った即興です。その日の板の上に立ったときに、動きがどういう所に転がっていくのか、屹立するのか、立ち上がっていくのか、その日のパフォーマンスでしか見れないものですね。

(横堀)
では、新作「HR★Y(ハードロックウィズユー)」について教えてください。


(北村)
禁じ手を持つ、つまり得意技を封印してみるところから始まりました。武器がない状態で自分を窮地に立たせます。いつも自分の踊りが生まれる時には何があるのかを考えた時、どうしようもない状況に立った時に私の踊りが出てきていました。そこで、照らし合わせた時に、その状況を作るとこから始めました。 (得意技を)封印し、一番の窮地を作る。その状況での踊りが今立ち上がりつつあります。

(横堀)
タイトル「HR★Y(ハードロックウィズユー)」のごとくロックですね。


(北村)
2006年のテーマはロックですね。ロック街道を突き抜けたいです。


(横堀)
今回は、カフェ4竕(Art Theater dB併設カフェ)で行われる写真展について教えてください。


(北村)
東京在住の小熊栄さんによる写真展です。ソロの2年目ぐらいからいろいろ撮ってもらっていました。関東の公演など、私も見たことのない写真もたくさんあります。

(横堀)
やはりソロ5周年ということで。


(北村)
ソロ5周年だけでなく、北村成美生誕35周年、dB出演10周年もあります。(笑)
一夜限りの作品の積み重ねではあるのですが、お客さんも、いろんなスタッフも寄ってたかって「なにわのコリオグラファー・しげやん」という作品を作っていると思っています。その舵取りが私ということで。今回は、しげチーム2006年のスタメンも決まって初陣ですね。


(横堀)
いろんな意味でも節目の公演になりますね。


(北村)
今までとこれからの道を大パレードして遊びます!

 

大阪だけでなく、関西一円、日本全国、世界各地で踊りまくっているなにわのコリオグラファー・しげやん。その「なにわ節」がまた新たな展開を見せる予感が確かに匂い立ってきたインタビューの時間であった。一楽さんは昨年末の「アートキャバレー#5」のご出演いただいた。強烈なドラムを聞いてる浮遊感と、同時上映されている(ドラムにコンピューター・システムを組み込んでいて、叩いたら映像が出てくる仕掛けになっている)映像のとんでもなさに圧倒されて、もうさらに浮遊感とあっけらかんと指をくわえながら見てる感じであった。一楽さんはしげやんの踊りをみてどんな音を出すのか、それに対してしげやんは・・と、熾烈なセッションを想像する。この二夜だけの激しい夢、はちきれんばかりに。(聞き手、文責:横堀ふみ)

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