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国内ダンス留学@神戸 6期振付家インタビューVol.2伊藤千枝 | BLOG | NPO DANCE BOX

2017.5.19

国内ダンス留学@神戸 6期振付家インタビューVol.2伊藤千枝

写真:あなたの寝顔をなでてみる。©片岡陽太

国内ダンス留学@神戸6期Newcomer/Showcase#5では、珍しいキノコ舞踊団の伊藤千枝さん振付による2007年初演作品「あなたの寝顔をなでてみる。」を、来年1月末に6期ダンサーと再演します。伊藤さんがダンス作品をつくり続けてきた変遷や、今ダンサーに求めることなどについて話してもらいました。

ー伊藤さんは、作品をつくる時は、普段どのくらい時間をかけますか?

伊藤:キノコ(珍しいキノコ舞踊団)の制作だと、構想は半年くらいで、リハーサルはおよそ3か月ですね。

ーそうなると、今回の再演は、リハーサル期間が1ヶ月というスケジュールなので結構厳しいですね。ちなみに新作をつくる時は、どこから作品の手がかりを見つけてきますか?

伊藤:ケースバイケースなのですが、そのときどきに大きなテーマがあって、その中から、「今回はこれをフィーチャーしてみよう!」というイメージです。音楽に関しては、日頃から作品で使用できないか考えながらいろいろ聴いています。日常生活の中でもいつも作品のことを考えていて、制作期間中はより集中して考える、という感じです。

ー大きなテーマというのはどのようなテーマですか?

伊藤:時期によって変わってくるのですが、今考えているのは、“人”とはどういう存在なのかな?とか。

横堀:大きい!

伊藤:いちばん初めは、“ダンス”というもの自体を考えていて、その中でも昔は、“日常”と“非日常”についてずっと考えていました。私たちが生活している状態が“日常”であるのに対し、舞台というのは“非日常”じゃないですか。では、「“非日常”であるはずの舞台にある私たちの身体というのは、“非日常”なのか?」とか。

横堀:なるほど。

伊藤:ということは、「“非日常”的な身体というのはいったい何なのか?」ということをずっと考えていて、いきつくところは「“踊る”という状態は“非日常”なの?」ということで、その問いは、私にとってはずっと「?」なわけで、つまり、逆にいうと“踊る”ことは私にとっては、とっても日常的なことなのに、非日常的空間にあがると、私のダンスも非日常になってしまうのか?ということを考えていました。

ー矛盾してしまうのですね?

伊藤:そうなんです。だから非日常的空間である「舞台」に、日常、つまり自分の「部屋」をつくってしまえ!というコンセプトで作品をつくったこともありました。劇場に壁や床を立ち上げて、実際に使っている家具や家電もすべて持ち込んで、完全な部屋をつくりあげました。(1998年「私たちの家」)そういう感じで、作品やクリエイションを通して「これは“非日常”なのか“日常”なのか?」ということを考え続けている時期もありましたが、“日常と非日常”というテーマから広がって、次に“場”としての舞台空間を考え始めました。

ーステージということですね?

伊藤:舞台を「場」として捉えたときに、“ホーム”とか“ハウス”とかに考え方が変わっていったのですが、舞台は私にとってホームでありつつ、作品を発表する空間でもあるんですよね。ということから「“ホーム”というのはいったいなんだ?」という問いが生まれました。

そのテーマを考えているときにつくったのが「家まで歩いてく。」という作品です。(2005年)そして話が戻りますが、次の大きなテーマが“人”なんです。私はずっとウィリアム・フォーサイスが好きで、彼が「人って素晴らしいじゃないか!」と言っている時期があったんですけど、そこに強く共感していました。それとようやく、ダンスには「どうしても言葉で表現できない」部分があると、最近言えるようになりまして。

ーどうしてですか?

伊藤:これまでもずっと、ダンス畑ではない方とお仕事することが多かったので、そういう部分では説明する責任や義務があると思っていて、言葉で表現する努力をずっとしてきたんです、…窓口として。言葉はもちろん、絵や写真を見せたりしながら、いろんなことをして手を尽くしてきたのですが、やっぱり「どうしても言葉で表現できない」部分があるなと、去年の秋に気づきました。

田中:最近ですね(笑)。

伊藤:実際にそういう体験をして言えるようになりました。やっぱり「言葉で表現できない」部分があるんだなということに気づいたのと同時に、実はそこがものすごく面白い部分なんだ、ということを実感しました。

写真:©地引雄一

ー去年の秋に一体何が起こったのですか?

伊藤:去年の秋に「六本木アートナイト」というイベントに出演したのですが、私がいま一緒に踊りたいと思った4人のダンサーと、30分の即興ダンスをやりました。その時は一緒に踊る人たちもそれぞれ違う出どころなので身体言語も違っていて、リハーサルも「どうすればいいかな?」と話し合ってたんですが、結局は言葉では結論が出ないので、言葉で説明することをやめて身体感覚だけでやりとりするようにしました。本番も「せいの、ボン!」という感じで踊りました。

写真:©六本木アートナイト2016

ーダンサー同士でも、言葉で表現できなかったということですね?

伊藤:そうなんです。でもそれがすごいことになりまして、私も含め、ダンサー全員が、これまで経験したことのない熱量を生み出しました。どう表現していいのか分からないのですが、やっている時はどんどん楽しくなってきて…、“楽しい”という言葉では表現しきれない「楽しさ」があったんです。「なんだこれ?何が起きてるんだろう?」という感じで、ずっとドキドキわくわくしっぱなしで、なんというか、“今”の連続だったんですね。

ー観客の反応はどうだったんですか?

伊藤:観客も今まで見たことのない反応でした。「即興は難解で伝わりにくいのでは?」という自分の勝手なイメージがあったのですが、踊っている最中に観客の顔を見ると、みんな笑っていました。笑うと言っても、「ゲラゲラ」ではなく、「わぁ――」という感じで。きっと私たちが「わぁ――」となってたんでしょうね(笑)。

うまく説明できませんが、その即興のステージが終わって、ステージから退けたときに、ダンサー全員で「これなに?なに?ヤバくない?ヤバくない?」とずっと言い合ってました。袖にいたスタッフさんも、「なんだこれ?よくわからないけど、俺泣いちゃったよ!」と言ってくれました。

ー奇跡的ですね。

伊藤:奇跡じゃないと思います。というか思いたい(笑)。その後も、一緒に踊った人たちと「あれは何だったんだろうね?」と話しながら、その興奮が何日か続いていたのですが、つまりそれは、やっぱり「言葉で表現できない」部分があるんだなということに気づいた衝撃だったんですね。感覚がひっくり返った感じです。

横堀:なるほど。

伊藤:あともうひとつ。まだ震災後の自分の表現に対して疑問を持ったままやっていた時期なのですが、2013年に「プロジェクトFUKUSHIMA!」という組織の催しに誘っていただいて、福島の方達と一緒にオリジナルの盆踊りをつくりました。

ー音楽家の大友良英さんたちが中心になっている組織ですよね?

伊藤:そうです。そこでいちばん最初につくった盆踊りがあるのですが、そのときびっくりすることがありまして、盆踊りで踊っている人達の方から、まったく別の種類の熱量みたいなものが出てきて、「これはなんだ?」という経験をしました。“熱の渦”みたいなのを感じたんです。そのときもあらためて「踊りって何なんだろう?」と考えさせられる出来事になりました。

そして、それから3年後の去年の秋に、やはりどう言葉で表現していいのか分からない、という経験をして、自分の中で思っていた振付の意味合いが「バタン」とひっくり返った感じがありますね。私の中に、振付の意味合いというのが何種類かあったのですが、わからなくなってきていた部分がわりと明確になったと思います。

ー何種類もある振付の意味合いの中で、今回の国内ダンス留学6期でやっていただく作品の振付というのは、どういった種類の振付ですか?

伊藤:「あなたの寝顔をなでてみる。」は過去の作品なので、あの時代に私がなにを考えてつくったかということになるのですが、あの頃は、ムーブメントで「景色」をつくりたかった時代です。舞台上に、ある種の景色を見たいと思っていました。景色そのものに意味があるのではなく、その景色を見た人が、そこから自分の思い出だったり今の自分の感情だったり、何かとリンクしたときに感情が動くということをやりたいと思っていました。

それ故に「あなたの寝顔をなでてみる。」というタイトルに繋がるのですが、自分が覚えている記憶にリンクしたり、自分では無意識なところ、タイトルでは「寝顔」ということになりますが、それ以外にも例えば自分の動物としての感覚だったり、この作品は人としてのそういう部分にやさしくタッチするような作品にしたいなと思ってつくりました。

ーそれは観客の無意識の部分をなでたいということですか?

伊藤:そうですね。

ーこの作品を映像で見せてもらいましたが、舞台美術もオレンジの空間で、振付の中に歪みがあったり、暗転が間にあってシーン転換とかも夢の中のようでした。

伊藤:あの頃、ピナ・バウシュに影響されて、私もダンサーによくアンケートとっていたのですが、この作品ではダンサーに「夢」についてアンケートとって、みんなの夢を繋いでつくったシーンもありました。それに合わせて音楽も編集したり、とにかく手がかかりました。振り数も多いしテクニックも必要なので、大変な作品です。

ー伊藤さんは、Newcomer/Showcaseでは最後の振付家なので、6期生もそれまでに鍛え上げられているはずです、きっと大丈夫だと思います!まだ、募集も始まっていないのでどんな人が6期生になるのか分からないですが(笑)。恐らく若いダンサーが多いと思うのですが、伊藤さんがダンサーに求めているものは何ですか?

伊藤:うーーーん。(長く考えて)「素直さ」かな。「素直である」と言うのは、本当に難しいことだと思っています。昨年の秋に即興をやってから強く思っていることは、自分が感じたことを素直に身体に伝えて、素直に身体から外に出すということがものすごく大事なんだと。ものすごく大変なんですけど。自分ではちょっと巫女さんに近い感じかなと思っていますが、さまざまなものに刺激や影響を受けたことを、自分の身体を通して、観客に伝えるということですね。

今回の作品は、それプラス、テクニックが必要ですね。この作品は、出演するダンサーにテクニックがなければテクニックのある部分をなくしたり、ダンサーに合わせて作品をつくり変えるというのではなく、出来るだけ忠実に再演したいです。作品がダンサーを選ぶという感じにしたいですね。これは、私のチャレンジでもありますね。

横堀:どうぞよろしくお願いします!今日は、どうもありがとうございました。

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